第31話

二人ともただソファーに座ってるだけなのに、ファッション雑誌の表紙みてぇだよなぁと。


そんなどうでもいい感想を抱いていれば、俺を観察し終えたSクラスの留学生はつと口を開き…





『【鈴蘭】の質も、随分と堕ちたものだな。』



『…彼を侮辱するのは許さないぞ、シャリーフ。』




リアル王子様の言葉に我らがエセプリンスが言葉を返す。



何となく、何となくですが今俺の事を言われてるのは分かりました。

だって留学生のセリフにバ会長が俺を見て鼻で笑ったもんね。


多分褒め言葉とかじゃなさそうだから、言葉が分かんなくて逆によかったかもです。



つかもう正座崩していいかな。

プリンスのお説教タイム終わったし。


いいよないいよな。

うんしょ、うんしょっと。





『驚いた、随分とその男に目を掛けているのだな聡一郎。


てっきりソレは隆義のお手つきだと思っていたのだが…』



『会長補佐ってだけで彼は隆義の所有物じゃない、有能な生徒会役員で大事な後輩だ。』




もみもみもみもみ。

痺れる両足を一心不乱に解す俺。


そんな風に両手を動かしながら、気付かれないようひっそりと三人を観察する。



バ会長と留学生がビジネスパートナーで友人だってのは聞いてたけど、どうやらプリンスとも結構親しい間柄みたい。


何喋ってんのか分からねぇけど、三人の表情とか会話のテンポからかなり砕けた印象を受ける。



友人っつーより友達っつーか。

何か…悪友って感じか?


もみもみもみもみ。





『聡一郎には恋人ができたと聞いていたが、もしやソレの事か?


とうとう隆義に毒されたか。』



『…もう一度言うが、彼は有能な生徒会役員で大事な後輩だ。


それにまだ恋人はいない、まだ…な。』




もみもみもみ。


もみもみもみ。





「……、む?」




ふと気がつけば、いつの間にかプリンスの目が俺へと向けられていた。

もみんこ中の俺へと向けられていた。


話の流れが分からない俺は、プリンスの視線に首を傾げる。



そんな俺を見つめながらプリンスは小さな優しい笑みを一つ。

つられて俺も思わずへらりと笑みを一つ。


…何なんでしょうかこのやり取りは。

どこぞのバカップルのようなやり取りは。



向かいの留学生が怪訝そうにこちらを見てるんですが。


バ会長は二本目のタバコに火を点けながら、ただジッとこちらを見てるんですが。



何だか居たたまれない。


早く足の痺れを取ってこの部屋から脱出せねば。

風紀室に行ってノエルちゃんからサインをもらわねば。


もみもみもみもみ。

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