第20話

「マロンちゃんと、上の兄二人は反対してくれてるんです。


相手がいくら王族とは言え、よく知りもしない相手の所においそれと嫁がす訳にはいかないって。」




けれど両親がとても乗り気で…。


そう言葉を続けた美里は、困り果てたように目を伏せた。



うん、驚くとこ満載だけど。


一つずつ話を整理すっと、美里は王族のなんちゃらさんに見初められて求婚されてるって事か。


えんじぇるの可愛さは海を越えちゃったって事か。



けど美里の様子からすると、あんま乗り気じゃないんだろうな。


まぁ当たり前か、よく知らない相手からいきなり結婚してくれって言われても困るよな。うん。





「それにお相手のその方は三鷹会長とご友人で、個人的なビジネスパートナーなんです。


なので無碍にお断りする事もできなくて…」



「…?何でそこで会長が出てくんだ?」




思わずん?と首を傾げる。


先輩のダチだから断りにくいって意味なのかと思ったけど、どうやらちょっと違う様子で。



結婚を断る事で【鈴蘭】の王様の反感を買うかもしれないって、心配してんのかとも思ったけど。


ダチの縁談がおじゃんになったからってあのバ会長が動くような、んな友情に熱い野郎には到底思えねぇし。



つかお相手って会長のビジネスパートナーなのか。

王族とビジネスしてるって…会長どんだけー。





「『月岡』はそれほど大きな企業ではありませんが、『三鷹』直系の子会社なんです。


私や兄二人が【鈴蘭】に入れたのも、『三鷹』の口添えに拠る所が大きくて…。」



「それって…」




完全初耳の内容に驚きながらも、俺は美里の云わんとする事をすぐに理解した。



つまり、あれか。


バ会長がどうこうって事じゃなくて、『家』ひいては会社同士の繋がりの問題になんのか。





(王族ってのにいまいち現実味がなくてピンと来なかったけど、なんか急に生々しくなったな…。)




俺は美里の『家』が、どれくらいの大きさの企業なのか知らないけど。


話を聞く限り、『三鷹』ありきの中小企業の会社ってとこなんだろう。



個人的なビジネスパートナーとは言え、今回の縁談はその『三鷹』の御曹司と強力なコネクションを持つまたとない機会になんのか。


それでなくても相手は王族、まさに玉の輿の王道で。





(つまり今回の縁談は美里個人の感情は関係なく、社運がかかった政略結婚に近いのか…)




利益第一優先の結婚になんのか。

親が乗り気ってそういう意味か。


うむ、何となく分かった。

美里が何に悩んでんのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る