特別クラス

第17話

窓際の一番後ろ。


つまり俺の真後ろの席は、一学期からずっと空席のままだった。



席は各自自由に選んでよかったから、最初俺は誰も近付かないそこに座ろうとしたんだけど。


そこは座っちゃダメなんだよ〜ってトキに言われて、首を傾げながらも一個前の椅子に腰掛けたんだよな。確か。





(や、ずっと不思議に思ってたんだけどね。何で座っちゃダメなのか。)




けどあの頃はまだこの学園独特の常識ってのを全然知らなくて。


トキに教えてもらった事を忘れないようにすんのが精一杯で。



イイコちゃんな俺はトキの忠告に素直に従ったんだよな。うん。



けど何で空席なのか聞くタイミングを逃して、いつの間にかそれが日常になって。


んで、そのまま今日までズルズルと来ちゃったんだよな。うん。





(まぁ百歩譲って同じクラスだった事に関しては、もう何も言うまい。うん。)




俺がただ知らなかっただけだし。


トキにもノエルちゃんにも聞かなかった俺がただ驚いただけだし。



けどノエルちゃん、出席日数足りてんの?


当然ながらこの半年間、教室に居る姿も授業受けてる姿も見た事ないんだけど。



また留年とかなったら洒落になんなくね?


つかテストの時どうしてたのさ?




…と、そんな俺の数々の疑問に答えてくれたのは、やっぱり物知りなフラミンゴ君でした。












「『Sクラス』…?」




昼休み、屋上。


俺はトキの口から出たその単語に首を傾げていた。



もきゅもきゅと手製の弁当を食べる俺の斜め隣には、購買の天むすを頬張るトキが。


反対隣では床に広げたハンカチの上に座った美里が、小さなバスケットに入ったサンドイッチを摘んでいた。



三人で輪になりながらの昼食タイムです。

ちなみにノエルちゃんは俺の後ろ、あの黒いソファーの上に。


俺の弁当箱からおにぎりを一個取って食べると、早くもそこに横になり寝だした同室者。



三つある内、唯一の明太子おにぎりを取られました。

残った二つは両方とも昆布でした。

ううっ、ノエルちゃんの馬鹿やろう。

まぁ昆布好きだからいいけどさー。ぱくり。





「Sクラスってのは特別クラスの略称で〜、文字通り特別な生徒の為に設けられたクラスの事だよ〜。」



「特別…?」




もきゅもきゅ、ごっくん。

甘めの玉子焼きを味わい飲み込む。


クラスは一学年AからJまであんだけど、Sクラスなんてのは今まで聞いた事なくて。初耳で。



特別っつーとあれか?


優秀な生徒っつー意味か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る