第16話

うん、やっぱこうだよな。

女の子ってのはこうだよな。



優しくって控え目で、おしとやかで健気で。


まさに美里みたいな子が男がグラッときちゃう女の子の代表だよな、うん。

思わずギュッと抱き締めたくなっちゃうよな、うんうん。



プリンスもノエルちゃんもやっぱ女の趣味変わってるよなーなんて、またまたそんな事を思っていた俺は…





――ガララ…




(……、ん?)




教室の扉を開けた途端、クラス内が異様なまでに静かな事に気が付いたのだった。


いつも朝の挨拶やら談笑する声が飛び交っているそこには賑やかな空気は一切なく、得も言われぬ緊張感が漂っていた。





――シー…ン……




え、なにこの空気?


え、え、なにこの静けさ?



誰も彼もお通夜並みに暗い顔をして、自分の席に着席してるクラスメート達。


や、つーか暗いって言うより何かみんな強ばってる?顔青くね?



いつも俺が教室に入ったらヒソヒソ陰口が聞こえてきてたのに、それすらないし。



なになにマジでどうしたわけ?


何があったわけ?





「マコっちゃん月岡さん、おはよ〜。」




そんな中、場違いな明るい声が上がりそちらを見れば。


窓際の俺の席、その前の椅子に腰掛けるトキがいて。



ゆる〜い笑顔を浮かべながら、ヒラヒラと手を振るふわふわ頭なフラミンゴ。


けど俺はそれに挨拶を返すよりも先に、窓際の一番後ろの席に座る人物に目が点になってしまったのでした。



だって、そこには――…








「…何で居んの、ノエルちゃん。」



「……」




つい一時間前の朝食時に寮室で別れたばかりの同室者が、俺の席の一つ後ろに座っていたんだから…。



えっなにコレ、幻覚?





「自分の席に居て何が悪ぃ。」



「…は!?ノエルちゃんこのクラスなの!?」



「え、マコっちゃん知らなかったの〜?」




ノエルちゃんのまさかの言葉に驚けば、トキがタレ目をパチクリと瞬かせて。


え、なにその当たり前みたいな反応!?

知らなかったも何も、ずっと空席だったじゃんその席!



いや…!えっと…!


つ、つーかそれよりも…!



いっ色々ツッコミ所満載だけど、まず俺が言いたいのは…!







「…出席日数、」




ポツリと一言。


そんな風に呆然と呟いた俺に呼応するように、予鈴のチャイムが静かな教室に鳴り響いたのだった。

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