第7話

俺の頭に思い起こされたのは、あの無人島でのプリンスの言葉。


そして先月、同室者の実家に行こうとした俺を止めたまさやんの言葉。



全然違う二人なのに、思い出される言葉には相通ずる所があって。


まさやんとプリンスはある意味似た者同士だったのかもしれないって、少し思った。





「約束された地位や将来を捨てた半田先輩の行動を、愚かだと言う人間もいるだろう。


事実俺も…少し前なら他と同じ様に、あの人の選んだ道を馬鹿にしていたかもしれない。」




けど、今は…





「先輩の決断を素直に尊敬しているんだ、俺には決してできない事だとね。


自分の足で歩き出したあの人の姿をとても格好良く、そしてとても羨ましく思うよ。」




そう言って小さく微笑んだプリンス桐原。


その言葉がじんわりと、俺の胸に染み込んでくるのが分かった。



…うん、そうだよな。





「うん、まさやんは格好いいッスよね。」




実は最近ちょっとイライラしてた。


それはバ会長が原因だったり、慣れない生徒会の仕事が原因だったり。



そして何も知らない奴らが、まさやんの陰口を言ってる事が原因だったり…。





(でも他人が何て言おうが関係ないよな、うん。


まさやんはまさやんだもん、ちょー格好いい男前兄貴だもん。)




それにこうして、まさやんの事を…その志を知ってる人がいる。



うん、それだけでもう十分じゃないか。


俺がいつまでもイラついてんのは間違いだよな。

幼稚だよな。




俺も、頑張らなきゃ。


次会った時に、まさやんに成長した姿を見せられるように。





「――…それに俺としては、ライバル減って好都合だしね。」



「?何か言いました?」




そんな風に自分に気合いを入れていれば、プリンスが俺を見つめポソリと呟いた。


小さくて聞き取れなかったそれに首を傾げるも、何でもないよとはぐらかされたのでした。








ちなみにこの後俺が


何気なしに…





「桐原先輩、俺と喋ってる時ももう一枚猫被ってません?


完全な素の喋りじゃないでしょ、それ。」




って言ったら





「好きな子には優しくしたいだけだよ。


安心して、君だけだから。」




って耳元で囁かれました。


ほんの一瞬だけフッと男臭く笑った顔に、もう一人のプリンスを垣間見ました。



完全に墓穴を掘りました。


プリンスの方が一枚上手でした。まる。



あと生徒会室に戻ったら会長の姿が消えていて、俺はまたぷっちんキレちゃいました。まる。

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