第4話

ごほん。


大変お見苦しいところをお見せしました、すみませんペコリ。



とまぁそんな様子からも分かるように、俺は再びバ会長に振り回されっ放しの日々を送っていた。


だってこの野郎ちょっと目ぇ離した隙にサボるはどっかに消えるは、やりたい放題なんだもん。




その中でも何がムカつくって。


会長しか処理できない書類や、判断が難しい重要書類は難なくこなすくせ。

サインや印鑑捺すだけの書類は、溜めに溜め込みやがるところ。



んでもってその度に俺が必死に催促するのを、ニヤニヤ笑って愉しんでやがるところ!


そーゆーとこが、マ・ジ・でムカつく!





(何で俺がコイツの世話なんかしなきゃなんねぇんだよ…!)




ピクピクと身体を震わせながら、今日まで何度も抱いた不満が脳裏を過ぎる。


勝手に会長補佐に任命された理不尽さを何とか飲み込み、前向きに頑張ろうとしてた自分が懐かしい。



けどだからっつって、仕事を放棄できない自分もいて…。


つーのも今月下旬に新生徒会が始まって最初のイベント、文化祭――通称『鈴蘭祭』があるからで…





(トキやノエルちゃんや、美里や栗山が忙しそうにしてんのに、自分だけ何もしない訳にはいかないし…!)




あと逃げたくねぇっつーか、コイツにだけは絶対背中を見せたくねぇってのが正直な気持ち。


売られた喧嘩は買っちゃう性分の自分が恨めしいです。俺の馬鹿野郎。





「三鷹会長、あまり黒崎君を困らせないで下さい。」



「桐原先輩…」




そんな俺を見かねて声をかけてくれたのは、眼鏡男子なプリンス桐原で。



他に新任の役員がいるからか、懐かしいエセスマイルを全開中の桐原先輩。


けど俺と目が合うと一瞬だけ素の微笑みを浮かべ、そして室内を見渡しながら口を開き…





「少し休憩にしましょうか。


黒崎君、私と一緒にお茶の準備手伝ってもらえるかな?」



「あっはい。」




プリンスの言葉に生徒会室が色めき立つ。


どうやらプリンスが直々に淹れてくれるお茶を飲める事に、みんなテンションが上がりまくりらしい。



いつもは美里が淹れてくれるんだけど、実家の用事とかでここ数日帰郷中なんだよね。



一方俺ん中じゃプリンスの好感度上がりまくり。


ああもうホント、プリンスの優しさと真面目さを煎じてバ会長に飲ませてやりたいよ。





「桐原先輩っ、何でこの書類がまだあるんですか!休憩する前に目を通してサインして下さいっ、期限今日までですよ!」



「…ん?それ栗山の担当じゃなかったかい?」



「貴方の仕事です!」




……あれ、何かデジャヴ。

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