紅葉の候

第3話

カメラ side




十月上旬。



秋色ますます濃く、菊薫る今日この頃。


【鈴蘭】の山全体も秋一色に染まり始め、白亜の城へと続く銀杏も徐々に黄葉並木へと変わりつつあった。



今年の仲秋の名月は、例年よりも随分遅く。


神無月の夜空に黄金(コガネ)色の満月が輝き、月見に出た人々の目を楽しませた。



小春日和の過ごしやすい日々が続きながらも、日も段々と短くなっていく。




澄み渡った青空。


冷涼な秋風。



そんなある日、白亜の城の赤い屋根を持つ塔の最上階から、一人の可憐な少女の涼やかな声が上がったのだった…。









「〜〜っ仕事をしやがれってんだこのクソバ会長があああ!!!」







…可憐な少女の……ごほんっ。













誠 side





赤の塔、生徒会室。



そこで俺はぜぃぜぃと肩を怒らせながら、目の前の会長席で悠然と寛ぐ男を睨み付けていた。


生徒会室内では他の役員が忙(セワ)しなく働きながらも、俺と会長のやり取りをチラチラと盗み見ている。





「ああ?してんだろぉが、ちゃんと。」



「おっせぇんだよペースが!サイン書くだけの書類に何十分かけてんだよ!!」



「静かにしろ黒頭、周りに迷惑だ。」



「〜〜〜っ!」




ニヤニヤと笑いながらああ言えばこう言う男に、コメカミがピクピク。


新生徒会が発足し十月に入って一週間、早くも俺の堪忍袋の緒が切れつつあった。



たっ確かに仕事中の室内で大声を出すのは、マナー違反だったかもしれないけど!


だったら書類の提出期限を守らねぇテメェは何なんだよ!

やればできるのにやらねぇテメェは何なんだよ!





「文句あんなら一人前に仕事できるようになってから言え。」



「〜〜〜っ!!」




不満が顔に出てたのか、そう言って鼻で笑う茶髪ヤンキー。


それにピキピキと頭の血管が浮き立つ俺。



たっ確かに未だタイピングに手間取ってますが。

事務処理も他と比べて俺が一番遅いですが。


んでもってバ会長の言ってる事が正論っぽくて、思わず言いくるめられてしまいそうになりますが。



ですが!ですが!





「俺の主な仕事はアンタを働かせる事なんだよっ!」



「そりゃあご苦労なこった。」



「〜〜〜っ!!!」




テメェの事を言ってんだよテメェの!!!


減らず口はいいから手ぇ動かしやがれええぇぇ!!!

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