第89話
一体全体、俺に何を期待してんのかは知らねぇけど。
取りあえず…
「ご忠告ありがとうございマス、でも俺の事なら心配してもらわなくても大丈夫ッスから。」
うん、大丈夫。
王子に心配してもらうほど俺、ヤワじゃないから。
それに龍ヶ崎も、強面な外見ほど凶悪な奴でもなさそうだしね。
俺の言葉にプリンス桐原は、『本当に』意外そうに目を見開いた後。
またすぐ『元』の顔に戻って、伏し目がちに俺に問い掛けてきた。
「…黒崎君は、もう龍ヶ崎君とは顔を合わせたのかな?」
「はい昨日、あいさつ程度ッスけど。」
うん、嘘は言ってないよ。
龍ヶ崎にとってあの『壁ベッコリ事件』は、あいさつ程度のもんだと思うからね。
けどこれ以上語る気はないぜ。
何か美味そうなもん持ってねぇかジッとこっちを観察してくるプリンスに、自分から餌あげるようなまねしたくないからさ。
(龍ヶ崎が風邪で寝込んでて、俺がその看病してるっつったら。
あのプリンススマイル浮かべて、ズカズカ部屋に上がり込んで来そうだしさ…)
この短時間王子と接しただけで、容易に想像できるその姿。
一晩かけてやっと荒ぶる大型獣を落ち着けたのに、また刺激されちゃ堪らない。
二人がダチだってんなら、どうぞお見舞いでもしてって下さいって誘ったかもだけど。
エセプリンスの口振りから、龍ヶ崎と別に親しい間柄ってわけじゃないみたいだし。
(つか俺、そろそろこのエセプリンスにイライラしてきたかも。)
何が面白いのか知んねぇけど、他人に探るように見られんのってあんまいい気がしないし。
頭じゃ相変わらずエセプリンスに対して、危険危険!って警報鳴ってっし。
ただコイツの意図がどうにせよ、コンビニで助けてもらっちゃったわけだしさ。
半ば強引とは言え、荷物運ぶの手伝ってもらっちゃったわけだし。
一応先輩だし。
律儀に対応してたんだけど。
それもそろそろ限界。
さっさと話切り上げねぇとなぁと、俺がそう思っていれば。
エセプリンスは苦笑を浮かべながら、再び口を開いたのだった。
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