第82話

もちろんよく当たるっつっても、所詮は勘なんで。

百発百中じゃないんで、単なる俺の思い過ごしかもしんねぇけど。





「君はもしかして、昨日入寮したっていう外部生君かな?」




そう言って、俺に優しげな笑みを向けてくるキリハラ様。


その態度から、俺より年上なんだろうと何となく感じ取る。



俺がそれに答えようとしたその時、野次四人組から横槍が入った。





「桐原様聞いてください!」


「あの外部生がいきなり私達に突っかかってきて!」


「私達は親切に外部生に御挨拶をしただけですのにっ。」


「山里君に暴力まで!」




「……」




おーい、脚色しすぎだぜー。

てか捏造も甚だしいぜー。


そんな野次四人組の主張をキリハラ様は優しげな微笑でなだめると、再び俺に目線を戻し…





「取りあえず、彼を放してあげてくれないかな?」




そう言って困ったような微笑みを浮かべ、俺が拘束したままだった男Aを指差したのだった。



あ、俺も思ったそばから忘れてた。

ごめん、男A。


パッと腕を放すと男は俺を一度睨みつけた後、腕を押さえながらキリハラ様の方へ走り寄っていく。





「桐原様!この貧乏人が俺の腕をっ…!」




いかにも、腕が痛くて動きませんって演技してる男A。


野次四人組も俺がどんなに野蛮人だったかを、口々にキリハラ様に説明している。



キリハラ『様』って呼ばれてるくらいだから、マジでどっかの国の王子様なのかなって思ったんだけど…





(でも顔は日本人だし、日本語ペラペラだし。


しかも制服着てるから、ここの生徒…だよな?)




なぜに、様付け?



もしかして先輩とかに対しては、様付けが当たり前とか?


え、俺も挨拶する時ごきげんようとか言わなきゃダメ?



俺がそんな事を考えてる間に、キリハラ様は五人組の言い分を一通り聞き終えたようで。


しばらく思案した後、ゆっくりと口を開いた。





「君達の言った通りなら、外部生君には何らかの処罰をしなければいけませんね。」




キリハラ様はそう言うと、少し気の毒そうな顔をしながら俺を見つめてきたのでした。

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