救世主?

第81話

颯爽とその場に現れたのは、


栗毛色の髪をした眼鏡男子君でした。





(うぉ、すげ…。)




突然現れたソイツは、前川さんとはまた別のタイプの眼鏡美形さんで。


一言で言うと『王子様』。



周りの空気がきらきらしてんの、キラキラ。


真ん中分けの栗毛のサラサラヘアーに、天使の輪っか出来てんよ。





「おはよう御座います皆さん、君達は…新入生ですね。


この度は【鈴蘭】への入学、おめでとう御座います。」




そう言ってにこやかな笑みを浮かべ近付いてくる、お伽の国の王子様。



王子の登場に半ば呆然としていた、野次飛ばし四人組は。


その王子の言葉にハッと我に戻った様子で、勢いよく王子に駆け寄っていった。





「桐原様、おはようございます!」


「今日も御機嫌麗しく桐原様っ!」




どいつも顔を上気させ、我先にと王子に話しかけている。


どうやら王子は『キリハラ』って名前らしい。



周りの野次馬達からも「桐原様…!」って声が聞こえて、黄色い声が上がってんし。



…てか野次馬の数、急激に増えてねぇか?





(おーい、男Aの存在忘れてんよー。)




ざわざわと周りがざわつく中、俺は未だに男Aの腕を捻り上げたまま。


ちょい呆れた目線を野次四人組に向けながら、俺は『キリハラ様』に視線を戻した。



すると向こうも俺を見ていたようで、『キリハラ様』とバチッと目が合った…ような気がした。





――ニッコリ




「……」




モッサリとした前髪で『キリハラ様』からは、俺の目は見えていないはずなのに。


俺はなぜか『キリハラ様』のにこやかな微笑から、目線を反らすことが出来なかった。



じっとりと。


嫌な汗が背中を伝う。



サラサラヘアーの王子様なのに。


物腰柔らかで言葉遣いも綺麗なのに。


穏やかな笑みを浮かべる優しげな風貌なのに。





(…何かこの王子様、苦手なタイプかもしんね。)




なーんかこう、背筋がザワザワするっつーか。


残念、俺の直感はよく当たるんだ。

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