第76話

言いにくいから、男Aね。


男Aがふんっと鼻で笑うと、それキッカケで後ろの連中もクスクスと笑い始めた。





「顔もお粗末なら服もそれ相応だな。」


「本当、みすぼらしい格好ですわ。」


「あ~臭い臭い、近付くと貧乏臭がこっちにまで移っちまうぜ。」


「なぜ新理事長は、この様な方の入学を許可なさったのかしら。」




「……」




あー、何か。


ちょっと面倒臭ぇ奴等に出会しちゃったかも。



俺、早く部屋戻って飯作りたいんだけどなぁ。

めっちゃ腹減ってっし。


昨日ほど高くはないけど、龍ヶ崎の奴もまだ熱あるから。

あんま一人にしたくないし。



俺はポリポリと頬を掻きながら、どうしようか考える。


だってさ、何かしてくんなら応戦の仕様があんだけどさ…





「まぁ貧乏人にはその程度の安物の布切れがお似合いだろ。」


「本当ですわ。こんな方が【鈴蘭】の制服に袖を通すなんて、私達生粋の鈴蘭生に対する侮辱ですわ。」




…コレだもんなぁ。



ちなみに俺の今日のスタイルは、上に黄緑のモコっとしたパーカーに。


下は黒の膝下短パンと、サンダルを突っ掛けて出てきました。



動きやすさ重視です。

いぇい。





(もう行っていいかな…。)




最初は、ホントにこんな金持ち居んだなって。


ちょい物珍しくて新鮮だったんだけど、早くも飽きてきたよ。



だっていかにも


『俺たち金持ちだぜ!平伏せ貧乏人め!』


って感じは母さんの周りに居なかったタイプだし。



けど…





(小っせぇ奴等。地元にも居たな、こういう井の中の蛙タイプ。)




時間の無駄だし。

買い物の途中だし。

もう無視しちゃお。


そう結論付けた俺はクルッと前を向いて、カートを押して買い物を再開しようとした。



んだけど…





「おい待てよガリ勉野郎!」




――ガッ!




…男Aに肩を掴まれて、引き止められちゃいました。

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