コンビニ事件

第75話

振り返った先に居たのは、この鈴蘭学園の制服を着た男女の五人組だった。



いかにもイイとこの坊ちゃん嬢ちゃんって感じの奴等。


どいつもこいつも、ニヤニヤくすくすと笑いながら俺に近付いてくる。





(…?何だ?)




俺がモッサリ前髪の奥から、訝(イブカ)しげにソイツ等を凝視していると。



その集団の先頭に居た男が、他人を見下した様な嫌なニヤけ顔で。


最初に俺に声を掛けた時と同じ馬鹿にしたような口調で、また俺に話しかけてきたのだった。





「何だよつまんねぇ、ただのガリ勉野郎かよ。


誰だよ、外部生が天才美少年なんてデマ流した奴は。」




そう言ってアハハ、フフフと笑う五人組。



…?昨日もちょっと思ったけど、外部生って俺の事だよな?


奨学生じゃなくて外部生って言葉のニュアンスにちょっと引っ掛かる物を感じるも、ひとまず俺はソイツ等に向き直った。





「何か用?」




どうやら俺に話があるみたいなんで、ひとまず簡単なクエスチョン。


けど明らかに小馬鹿にした感じで声を掛けてきた相手に、愛想よくしてやる義理もないんで素っ気なく。



つか、何で制服着てんだろコイツ等?


入学式は明日で、学校は明後日から始まんのに。



もしかして外出時は、制服着用っつー寮の規則でもあんのかな?


いやでもこのコンビニまで来る途中すれ違った寮生は、普通に私服着てたし。





「っ、庶民のくせに誰に向かって偉そうな口利いてんだよ!」



「……」




えっと、これ俺絡まれてる?


俺の態度が気に障ったのか、カッと頭に血が上ったように目くじらを立てる先頭の男。



うん、昨日ヤーさん顔な手負いの獣から散々威嚇されまくった後なんで。


いいとこの坊っちゃん風な男に凄まれても迫力に欠ける、んでもって逆にどう反応すりゃいいか困る。





「ちょっと頭がいいからって勘違いして、たかが貧乏人の分際で【鈴蘭】に入ってくるなんてホント厚かましい奴だよな。


こんな庶民丸出しの野郎が鈴蘭生だなんて学園の格が下がるってもんだ、あーやだやだ。」




俺がソイツ等の目的を図りかねていれば。


また元のニヤニヤ顔に戻って口を開いた、五人組の先頭に立つその男。

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