第74話

そんな事を思いながら一階のあるっていう、コンビニを訪れてみたんだけど…





「…何これ、すげぇゴージャス。」




目の前に広がる光景に、昨日から驚きっぱなしだった俺も思わず口をあんぐり。



ウィーン、と自動ドアが開いた先。


そこにあったのはコンビニっつー表現が当てはまらない規模の、何ともきらびやかな空間で。



コンビニっていうよりあれだよあれ、デパ地下。


めちゃ広いし、めちゃキレイだし。

何つーか、空気がキラキラしてんだけど。





(…ここ、コンビニって名乗っちゃいけないと思う。うん。)




普通のコンビニにスイーツが陳列したショーケースはないと思う。


普通のコンビニに焼き立ての香りが漂うパン屋さんはないと思う。



…ま、お金持ち校だしな。

うん、そういう事にしとこ。


そうして自分に無理矢理納得させつつ、俺は自称コンビニの門を潜ったのでした。










――カラカラカラ…




「お肉にー、卵にー、ぎゅーにゅーもー。」




ふんふんふーん。



鼻歌交じりにカートを押しながら、必要な食材をカゴに入れていく俺。


普段から自炊するもんで、やっぱ買い物しながら何作るか考えるのは楽しい。



しかもこんな山の天辺にも関わらず、新鮮な食材がいっぱい。

わくわくだよ、わっくわく。


あ、ちなみに会計は現金じゃなく。

寮のカードキーがクレジット機能も兼ねてるんで、それで支払われるようになってるんだって。





(つか龍ヶ崎って、嫌いな食い物あんのかな…?


まぁいっか、あったら俺がもらって食えば。)




そんな事を考えながら、カラカラとカートを押してデパ地下コンビニを物色。



昨日の晩飯、オニギリ二個だったんで。

朝だけど肉系をガッツリ食べたい気分です。


龍ヶ崎の方は消化にいいオジヤか、中華粥辺りがいいかなー。



そうして俺は食材で一杯になってきたカートを押しながら、自称コンビニで朝の買い出しを楽しんでたんだけど…





――カラカラカラ…



――カラカラカラ…



――カラカ…




「おい、そこの貧乏人。


お前だよな、噂の外部生って奴は。」



「…ん?」




――ラカラ…




後ろから、知らねぇ声に呼び止められたのは。

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