一日の終わりに

第70話

――――……





――スー…、スー…




(…やっと寝た。)




はぁ、なんだかどっと疲れたよ。


コイツ病人なのに元気よすぎ、元気よすぎて逆にヤバかったんじゃねぇの。





誠 side




荒ぶる龍ヶ崎をどうにか寝かしつける事に成功した俺は、ほっと一息。


新しい冷えピタを貼って、床に転がったペットボトルを拾って。



残り少ないそれを見て、冷蔵庫に水を取りに行こうと俺は立ち上がろうとした。



んだけど…





――グンッ



「…うん?」




身体を引き戻されるような軽い衝撃を受けて、ふと振り返ると。


あらま、龍ヶ崎が俺のパーカーの裾をガッチリ掴んでんの。



うーん、コレどしよ。


無理矢理引き剥がす事も、出来なくはないけど…






『うざってぇんだよどいつもコイツも!


テメェ等の利益や権力や面目がそんなに大事なら、そっちで勝手にやっときゃいいじゃねぇか!


下らねぇ駆け引きに、俺を巻き込むんじゃねぇよ!!』





…うん。



多分龍ヶ崎って、普段あんな風にぶちまけるって事はしないタイプなんじゃないかな。


今だから分かるけど、初対面で俺に絡んできたのも具合悪くてイライラしてたんじゃないかな。



外見といい俺に対する脅し文句といい、不良である事に変わりはなさそうだけど。


キレるにしてももっとこう、静かに凄むってタイプなんじゃないだろうか。



それが今日たまたま風邪で熱上がちゃって一気に爆発!って感じ、かなぁ。


まぁ何度も言うように、今日初めて会ったばっかなんで。

あくまで推測に過ぎないけどねー。





「……」




俺は龍ヶ崎を起こさないよう、その見た目よりも柔らかなそっと髪を撫でた。


すぐ傍の床に座り、ベッドに肘を付きながら。



うん、やっぱキモチー。

さわさわさわ。





(…龍ヶ崎の言う『そっち』ってのが何なのかは、分かんねぇけど。


コイツの周りには何つーか、ろくな奴が居なかったんだな。)




単なる風邪の看病に、あそこまで拒絶するってさ。

他人の心配したら即座に偽善者なナルシスト認定しちゃうとか、よっぽどだよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る