第68話

グルグルと、視界が歪んで。


いくつもの『声』が、頭ん中で木霊する。



気持ち悪ぃ、気持ち悪ぃ…!


うるせぇんだよ、もう喋んじゃねぇよ!






ノエル side





「うざってぇんだよどいつもコイツも!


テメェ等の利益や権力や面目がそんなに大事なら、『そっち』で勝手にやっときゃいいじゃねぇか!


下らねぇ駆け引きに、俺を巻き込むんじゃねぇよ!!」




もううんざりなんだよ、『お前等』には。


うざってぇんだよ、気持ち悪ぃんだよ。



一体俺に、何を求めてるってんだよ。


これ以上俺から、何を持ってこうってんだよ。



っ痛ぇ…。


頭が、身体が、…心が。



痛たくて痛くて、堪らねぇ。





「俺はテメェみてぇに他人の心配をする自分に酔ってやがる偽善者野郎が、一番嫌ぇなんだよ!!!」




頭が、グチャグチャで。


今にも、割れそうだ。



壊れ、そうだ。






『龍ヶ崎組組長の息子っつても、所詮は妾の子。


ましてや外人の血が混じってるとあっちゃ、お前も色々苦労するだろうなぁ。


――ノ・エ・ルちゃん?』





壊される、くれぇなら。



こんな…こんな世界。




全部全部全部全部全部全部全部全


部全部全部全部全部全部全部全部


全部全部全部全部全部全部全部全


部全部全部全部全部全部全部全部





ぜ ん ぶ ――…











「言いたい事はそれだけか?」






――ゴンッッ!!!







「ついさっき会ったばっかのお前に、俺の行動を偽善だなんて言われたくないね!


俺にとっちゃ病人が居たら看病するのは『偽善』じゃなくて、『当然』の事なの!」





…当然?





「お前の方こそ、周りにあるもん全部を拒絶してる自分に酔ってるだけじゃねぇか!」



「っ、会ったばかりのテメェに俺の何が分かるってんだ!!」





当然、なんて…






『仮にも龍ヶ崎の姓を名乗るなら――』





んなの






『あんな外人女のガキがなんで――!』





そんなの






『顔を見ただけで虫酸が走る、【半人前】の汚れた血め!』





今まで、



今まで一度だって…。

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