第64話
誠 side
――パンッ!
「うおっ!?」
音を立てて撥ね除けられたのは、ペットボトルを持っていた俺の手。
突然の事にビックリしてペットボトルを離してしまい、そのまま床にコロコロと転がってしまう。
入ってたのは三分の一程度だったから少し床を濡らしただけで、残りは零れずに済んだ。
それにちょっぴり安堵した俺が視線を戻せば、ベッドから上半身を起こしてこちらを睨み付ける龍ヶ崎がそこに居た。
「さっきっからうぜぇんだよ、このオタク野郎…!」
「……」
え、何でまたキレてんのコイツ。
え、お前がうわ言で『水』っつったんじゃん。
冷えピタを新しいのに取り替えようと剥がしたとこで、苦しそうに唸ってたんじゃん。
えええ、コイツの地雷がどこにあんのか全然分かんねぇ。
てか、俺オタクじゃないって。
「何なんだよお前、一体何が目的だ…!
俺に恩でも売って『家』に取り入る気か、あ゛ぁ゛!?」
…うん、何て言うか。
普通病人って、弱気になるもんなんじゃねぇの?
人肌が恋しくなって、甘えたな自分が顔を出すもんなんじゃねぇの?
何この手負いの獣。
ちょう殺気立ってるよ。
ヤクザ面、五割増です。
「落ち着けって、お前なにそんなに怒って…」
「――っるせえぇ!!!」
ちょ、他人(ヒト)の話遮りすぎ。
キレやすいって考えものだぜ。
そんな俺の心境とは裏腹に、龍ヶ崎のボルテージは上がっていく。
つーか熱のせいで前後不覚状態で、完全に自分を見失ってるみたいだった。
「うざってぇんだよどいつもコイツも!
テメェ等の利益や権力や面目がそんなに大事なら、『そっち』で勝手にやっときゃいいじゃねぇか!
下らねぇ駆け引きに、俺を巻き込むんじゃねぇよ!!」
一体何の事を言われてるのか、分からなかった。
ただ俺に向かって怒鳴る龍ヶ崎は、『俺』にっていうよりも。
俺を通して、『誰か』に向かって叫んでるようで…
「龍ヶ崎、あんま大きい声出すなって。
また熱が上が…」
「俺に指図すんじゃねえ!!!」
大声を出して、ハアハアと荒い呼吸を繰り返す手負いの獣。
それでも龍ヶ崎は尚も俺を睨み付けながら、言葉を続けたのだった。
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