冷たい手

第62話

そりゃさそりゃさ。


俺だって、変だなって思ったんだよ?


女子寮の寮長が何で、男なんだろ?ってね。



でもさでもさ。


しのちゃんが迎えに寄越してくれた人が、これから俺がお世話になるスズラン館の寮長で。


しかも俺の入寮許可書があって、それ出されっちゃたらさ。



誰だって、まさやんが俺の入る『女子寮』の寮長だって思うじゃん。










(どうすっかなー…)




晩飯を食べ終えた俺はマイルームの勉強机に座って、一人うんうんと頭を悩ませていた。


一人ってか、俺のベッドで龍ヶ崎が寝てるけどね。

ちゃんと市販の風邪薬飲ませて、寝かし付けましたよ。はい。





(これって多分、書類ミスかなんかだよなぁ…)




この容姿や名前、言動のせいで俺は男と間違われる事が多くて。



バイトの面接の時も男って思われて採用される事あったし、…履歴書に『女』ってちゃんと書いてたのにね。


中学ん時も卒業まで俺の事を男だって思ってた先生とか居たし、…ちゃんと制服のスカート履いてたんだけどね。



だからこれまでと同様今回も、男と勘違いされちまったんだろうって推測が付いた。






『ちったぁ女らしくしやがれ、バカマコ。』





うん、ごめんちゃい三鷹さん。

反省してます。


これがナチュラル仕様とは言え、俺にも非はあるしね。



三鷹さんの幻聴がしたところで俺は、閉じていた瞼を上げた。


これ以上は一人で考えてても、仕方ねぇよな。



取りあえず、まずはしのちゃんに連絡して。



それから…






『マコちゃんごめんね~!


ホントは今日中に会いたかったんだけど、明後日の入学式の準備がまだ終わってないのよ~!』





「……」




思い出されたのは、ちょっと泣きそうだったしのちゃんの声。


今年理事長に就任したばかりで、何かと大変で忙しい様子だったしのちゃん。



そんなバタバタした中俺なんかの事で、これ以上仕事を増やすのは申し訳なくて。


明後日には直接会えるわけだし、相談はその時でいいかなって考えが頭に浮かぶ。



それに、今は…





――ハァ…、ハァ…




このおっきな病人を、


ほっとけねぇし…な。

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