第61話

そこでようやく心の準備ができて、隣の部屋を開ける決心が付いたんだよね。


俺のマイルームに隣接する部屋、その扉をそっと開けた俺が見たモノは…





――ガチャッ…




「…なんもねー。」




冷蔵庫に続き、本日二度目の感想。


そこは備え付けのベッドと勉強机と本棚以外、ほとんど何も置かれてないシンプルな部屋で。



ぬいぐるみや可愛らしい鏡や、アイドルのポスターや友達との写真が貼ってあるボードなんか全部なし。


辛うじてあったのは数冊のメンズ雑誌と、壁に掛けられた男物の上着だけ。



到底女の子の部屋とは思えない。

俺が言うのもなんだけどさ。


つまりはこの部屋に住んでるのは、男。


しかも現在絶賛気絶中のヤクザ男が、俺の同室者の『龍ヶ崎ノエル』である可能性が大になったってわけ。



本人に確認するまで、にわかには信じられなかったけどねー。










俺は目の前で粥を食べてる男――『龍ヶ崎 ノエル』を見つめながら、浮かび上がる最大の疑問について考えていた。



今日俺は、女子寮であるこの『太陽寮』に入寮したはずなのに。


なぜ『男』のコイツが、同室者なのかという事。



どう見たって実はコイツが女でした、ってオチは考えられねぇし。


どこをどう見たって、でかくてゴツくて強面の男以外の何者でもねぇし。



うーん、うーん。


うー…






『ハハ、男と女をごちゃ混ぜに寝かすわけにはいかねぇだろ?』





…ん?



そこでふと思い出したのは、この太陽寮の男前な金髪寮長の事。





「な、なぁノエ『ギロッ』…龍ヶ崎。


まさや…半田先輩ってさ、女子寮の寮長で合ってるよな?間違えねぇよな?」




忘れちゃってた俺の最初の疑問。


何で女子寮の寮長が、男のまさやんなのかって事。



そんな俺の質問にヤーさん顔な龍ヶ崎は、何とも怪訝そうに眉を寄せた後。


つぐんでいた口をようやく開き、俺の質問に答えてくれたのだった。






「スズラン館の寮長で、半田つったらこの太陽寮の…。


――…『男子寮』寮長の半田しか、いねぇだろ。」





はい、


問題発覚です。

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