夕食
第59話
誠 side
弱火でじっくり。
グツグツと。
「…よしっ、でけた。」
捨てるのはもったいなくて、余ったお米を家から持参。
キッチンにあった小振りの土鍋を使って、これまた家から持参した煮干しで出汁取って作ったお粥の出来上がりです。
具がないとか言わないの。
一応梅は入ってるんだから。
自家製の小さい梅だけど。
だってここの冷蔵庫ホント何もないんだもん。
明日買い出し行かなきゃなー。
「入るぞー。」
キッチンにあったお盆に土鍋を乗せて、俺は今日から住む事になったマイルームへ。
お盆で両手が塞がってるからノック代わりに声を掛ける。
ノブは肘でも開けれるんでご心配なく。
そうして部屋に入れば、上半身を起こした状態のヤクザ男が俺のベッドに居て。
…横になってろって言ったのに、ったく。
ただベッドから出る気力はないらしく、座ったままジッと探るような目を俺に向けてきていた。
「ほらお粥、食欲なかったら無理に食わなくてもいいけど。
何か少しでも腹に入れねぇと、食後に薬飲まなきゃいけねぇしさ。」
そう言いながら、ベッド脇にあるチェストの上に盆を置く。
土鍋の蓋を開ければ、フワッと白い湯気が上がった。
一緒に持ってきた茶碗にお粥を適量よそい、レンゲと一緒にヤクザ男に差し出す。
「……」
「…うん、食欲ねぇなら無理に食わなくてもいいからさ。
ひとまず手に持つだけ持って、匂いだけでも嗅いでみようぜ。」
茶碗を受け取る事もせず、無言で俺の手元を見つめるヤクザ男に対し。
もう一度同じセリフを繰り返して、促す言葉をかけてみる。
病人相手なんで、なるべく穏やかな声のトーンで。
つーのも熱のせいで、あんま頭が回んないだろうから。
自分から動き出すのをジッと待つ。
コイツが目覚める前に体温計ぶっ差して熱計ったら、何と八度ニ分もあったもんで。
これ以上熱が上がるようなら、お医者さんに診てもらった方がいいかもだけど。
ひとまず薬飲ませて安静にしねぇと。
そうしてその状態のまま数秒待っていれば、ようやく俺の差し出した茶碗を受け取ったヤクザ男。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます