第53話

三鷹さん直伝パンチはかなり効くけど、このヤクザ男ガタイいいし。


すぐ立ち上がるかと思ったんだけど…





――ハァ…、ハァ…




って、あれ?


もしかしてコイツ、気ぃ失ってる?

しかもなんか顔赤いし、息も荒くねぇ?



もしやと思いヤクザ男の傍にしゃがみ込み、その額に手を当ててみる。





「…げ、熱あんじゃんコイツ。」




手に感じた高めの体温、明らかに発熱してる男の身体に眉を寄せる俺。



マジかよコイツ、これが平熱ってわけじゃねぇよな。


風邪引いてんのかよマジかよ、んな状態で俺に喧嘩売ってきたのかよコイツ。



再び呆れのため息を吐きながらも、気絶した男相手に今更問いただす事もできず。


どうしたもんかと腕を組ながら、頭を悩ます俺。





(えっと、冷えピタに解熱剤にスポーツドリンクに…。


つかその前に、ノエルちゃんに連絡入れた方がいいよな…。)




未だに帰ってくる気配のない同室者。

一体どこに行ったのか分からねぇけど。


ヤクザ男がこんな状態の今、俺が知らせるべき相手はコイツの恋人のノエルちゃんで。



ただ言うまでもなく、知らせたくても俺はその連絡先を知らなくて…





「…悪ぃ、ちょっと探る。」




少し考えた末、気絶した男に形だけの断りを入れて俺はソイツの服のポケットをゴソゴソ探り始めた。



何をって、携帯ですよ。


コイツの携帯からノエルちゃんに連絡取るしか、他に手段がねぇからさ。

ちょっくら拝借しようと思ってね。



けど携帯を探し当てる前に俺は自分の発見した物に、またまた首を傾げる事になったのでした。





(あ、これって…)




出てきたのは、濃いブルーのカードキー。


それは俺の花柄のと同種の、寮のカードキーで。



確か紛失した時の為にカードキーには、寮の部屋番と所有者のフルネームが記されてるってまさやんが言ってたっけ。


おっ、じゃあコイツの名前分かるじゃん。



同室者の、貴重な俺の女友達候補の彼氏相手にいつまでも『ヤクザ男』はねぇよな。うん。


えーと、なになに。







『Sun No.2083、Noel Ryugasaki』。






(…って、んん?)




のえる、りゅーがさき?

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