ノエルちゃん

第51話

??? side





イライラする。




家の奴等にも



この学園の連中にも、



…自分自身にも。




こんな世界



全部、壊れちまえばいい。













誠 side





リビングのドアが開いて、そこから姿を現したのは…





「…テメェ二度と俺の前にツラ見せんなっつっただろが、あ゛ぁ゛!?」




めちゃ不機嫌そうな顔でガンを飛ばす、ヤクザ男でした。



あれ、何これデジャヴ?


てっきり明るい茶髪を靡かせた『ノエルちゃん』が帰ってきたと思った俺は、本日二度目の一時停止状態。



どうやら今度はこのヤクザ男一人だけらしく、ノエルちゃんの姿はどこにもなくて。



…?





「あーっと、ノエルちゃんは…」




まだ玄関かな、とか。

トイレにでも行ってんのかな、とか。


そんな考えを巡らせながら、ノエルちゃんはどうしたのかってソイツに聞こうとしたんだ。



けど何ともドでかい破壊音に遮られて、最後まで言う事ができなかったんだよね。






――ドッガァァンッ!!!




「っオタク野郎、テメェ殺される覚悟は出来てんだろうな…!」




何の破壊音かっつーと、それはですね。


殺気立ったヤクザ男が拳一つで、自分のすぐ横にあった壁をベッコリ凹ましちゃった音ですよ。



静まり返るリビング。


その入り口に立つヤクザ男に、キッチンの冷蔵庫前に居る俺。



俺とヤクザ男の間にはリビング中央に置かれた、ソファーとテーブルの隔(ヘダ)たりがあるわけなんだけど…





(んなの全部ぶっ飛ばして、一直線に俺に殴りかかってきそうな形相<ギョウソウ>なんだけどコイツ…。)




こんなにキレてんのってやっぱあれか。


俺がまた馴れ馴れしく、彼女の名前ちゃん付けで呼んじゃったからか。



いや、俺もさっき反省したばっかだったんだけど。

現れたのがコイツ一人で、ちょっとびっくりしちゃったもんで。

思わず口から出ちゃったんだよね、失敗失敗。


取りあえずここは何とか、話し合いで穏便に…





「ちょっとお前、落ち着けって。悪かったよ、お前の彼女の事名前で呼…」



「うるせええっ!!」




俺の謝罪を最後まで聞く事なく、大型の獣が相手を威嚇するような怒号を上げたソイツ。


それと同時にドガアァン!と、ソファーが蹴り飛ばされる。

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