第50話

――サアァァァ…




「あー、風が気持ちいー。」




マイルームの片付けが終わって一息吐(ツ)いた俺は、部屋から続くベランダへと出た。



ベランダは結構広くて、隣のノエルちゃんの部屋と繋がってるみたい。


マイルームは寮室の構造上、リビングの半分くらいの大きさだった。



それでも結構広いんだけどね。


勉強机やベッド、本棚やクローゼットも備え付けてあって至れり尽くせりって感じ。





(こんなに広いんだったら、朝練もここでできんな。)




俺の毎朝の日課、一人稽古。


師匠直伝の空手の型を一通りやって、その後はそのときの気分で身体を動かす。



これやんねぇと、一日気が引き締まんねぇんだよね。


明日からここが俺の稽古場になりそうです。





「うっし、それじゃ今から…」




――ぐううぅぅ~…




館内でも探検すっか、と。


そう続くはずだった俺の独り言を止めたのは、盛大に存在を主張し出した腹の虫で。



うむ、もう晩飯の時間か。

キッチンあっし、何か作っかな。


という事で、リビングにある冷蔵庫の中身をちょっと拝見です。






そうしてキッチンに足を踏み入れた俺はただ今、眼前に広がる冷蔵庫の中身に目を点にしていた。



や、だって…さ。





「…なんもねぇ。」




え、なにこのガランとした冷蔵庫。

え、酒と水しか入ってねぇんだけど。



いや、別に食い物が入ってる事を期待してたわけじゃなくてさ。


食材は今から一階にあるっつーコンビニに買いに行こうって思ってたから、それは別にいいんだけどさ。



ただ要冷蔵のマヨネーズとかケチャップとかの調味料があんなら、借りようと思って。


確認の為に冷蔵庫開けてみたんだけど、想像以上に何もなさすぎて面を食らう。



つーか、酒が普通に置いてあるって。

これってまさか、ノエルちゃんの…?


んな風に俺が意外すぎる冷蔵庫の中身に一人戸惑っていた…と、その時。





――ピッ、ガチャッ…




玄関の開く音が聞こえた。


あ、ノエルちゃんのお帰りだ。

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