第48話
鬼の形相を更に不機嫌に歪め、未だ玄関先に立つ俺の胸ぐらを掴んできたソイツ。
グッと身体を引き寄せられて、パーカーの胸元が伸びる。
ちょ、止めろテメェ。
このパーカー気に入ってんだぞ。
伸びちまうじゃねぇか。
(って、ここで喧嘩始めるわけにはいかねぇよな…)
未だに正体不明のその男。
胸ぐら掴まれた事にムカッとするもソイツにぴったり寄り添うノエルちゃんの態度から、知り合いなんだと判断。
せっかく今日から同室者になるっつー、女の子の前で。
その知り合いと思われる男を、問答無用で殴り飛ばすわけにもにかなくて。
どうしたもんかと内心困りながらも、ひとまず言葉で事態の収拾をはかろうとした…その時。
不意に、間近にあったヤクザ男の顔が痛みに歪んだように見えて…。
…?
「…チッ!
テメェ、俺の前に二度とその面見せんじゃねぇぞ。」
盛大な舌打ちを一つ。
突如俺を解放したヤクザ男はそう言い捨てると、俺の身体を押しやり玄関のドアへ。
俺一人を残し、ノエルちゃんと共に部屋から出て行ってしまったのでした。
――バタン…
「……」
…何だったんだ、今の。
いきなり凄まれて絡まれて、そして中途半端に放り出されて。
しかも去り際、思っ切り睨まれたし。
…ノエルちゃんに。
こうキッ!って、目尻を釣り上げる感じで。
(俺何か、まずい事言ったのかな…。)
ヤクザ男よりもノエルちゃんの反応の方が気になって、人差し指でポリポリと頬を掻く俺。
失敗したかなぁ、いきなり名前呼びは馴れ馴れしかったかなぁ。
あ、つーかもしかして。
ヤクザ男とノエルちゃんって、カレカノの関係だったり…?
「あー、そりゃ怒るわな。」
初対面で、自分の彼女相手に馴れ馴れしくされたらさ。
男がここに居たのも彼女の部屋に遊びに来たとか、そんな感じだったのかな。
あー、納得納得。
そう結論付けた俺は…
「あとで謝らないと、な。」
取りあえず今は、
お部屋へGOです。
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