第47話

んな風に何とも豪華な玄関先で、一触即発の雰囲気が流れていた…その時。





「龍さまぁ、どうなさったんですの~?」



「!」




突如俺とソイツの間に入ってきたのは、何とも艶めいた甘い声。


それがどこから聞こえたのか分からなくて、俺はパチクリと瞬きを一つ。



するとヤクザ男の後ろから、ひょっこりと。


明るい茶色の髪をした女の子が、顔を出して…。





(…あ、えっ?


もしかしてこの子が、ノエルちゃん…?)




ヤクザ男がでかくて気付かなかった。

背後にもう一人居るって事に。


男の腕に自分の両腕を絡め、胸を押し付けるように男に寄り添うその女の子。



この子が龍ヶ崎ノエルちゃん…?


想像してた子と、ちょっと違った。

ノエルって名前だからてっきり、ハーフかなって思ったけど。



その子は結構濃いめの化粧をした、バリッバリの…日本人で。





(でも、この部屋に居るって事はこの子が同室者で間違えないんだよな…?)




その女の子の登場に、玄関扉を開ける前のドキドキがカムバック。


ピシャッと背筋が伸びて、俺の視線はその女の子一身に注がれた。



何でこんなヤクザ男が女子寮に居んのかは分かんないけど、ひとまずコイツの存在は置いといて。


何事も最初が肝心。

第一印象は大切に。





「俺、今日からここに入る事になった黒崎 誠っていうんだ。


外部生だからこれから何かと世話になるかもしんねぇけど、仲良くしてくれっと嬉しいな。


宜しく…えっと、ノエルちゃん。」




親しみを込めて。


下の名前をちゃん付けに。



呼び捨てはまだ早いし。


逆にさん付けだと今後距離がなかなか縮まらなくなもしんねぇから。



前髪モッサリで。


向こうから見たら、俺がどこ見て話してんのか分からなかったかもしれないけど。



俺は確かに、


『ノエルちゃん』の方に向けて


自己紹介をしたんだ。




なんだけど…





「あ゛あ?テメェ舐めてんのかゴラァ!」




なぜかヤクザ男が、お怒りになりました。


…え、何でだよ?

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