第45話

まぁ可愛いし、ありがたく使わせてもらうけどね。


アナログな鍵っ子だった俺にはカードキーなんて新鮮だし。



それに俺だって女の子だもんっ!


お花さん大好きっ!





(…うむ、心の中とは言え一人でボケんのってやっぱ虚しいな。


ダメージがそのまま自分に返ってくるし。)




っと、気を取り直して。


ではでは、いざ突撃です。





――ピッ、ガチャ…












「……」




まさに、絶句。



玄関の扉を開けた俺は、そのまま一旦閉めようかって思うくらいの現実と向き合っておりました。



俺の目の前に広がってるのは、ビックリするくらい広くて豪華な玄関で。


えっここだけでアパートの元の俺の部屋くらいあんじゃね?って感じる広さ。



そこから真っ直ぐ奥へと繋がる廊下は、人が三人横一列に並んで通れるくらいの幅があって…。



三鷹さん家のマンションで、ある程度は見慣れてっけどさ。


でかくて豪勢な寮の外観やロビーから、部屋の中も何となく予想はしてたけどさ。





(どこのデザイナーズマンションだよ、んなとこに住むのが高校生たった二人って…)




しかもこの部屋に着くまでの道すがら。


廊下にズラリと並んでた扉の先には全部、これと同じ光景が待ち受けてるって事で。





「…取りあえず、上がろ。」




玄関ですでに出鼻をくじかれそうになるも、気を取り直して俺はようやく部屋の中へ。



ガチャッと扉が閉まる音を背後に聞きながら、靴を脱ごうとふと下を見た…その時だった。


大きさの違う二足の靴が、そこにあるのに気が付いたのは。



一足は小さめの茶色いローファー、新品みたいにピカピカに磨いてある。


それに比べてもう一足の靴は、かなり大きいスニーカーで。



てか、男物?


何で男物の靴がココにあんだ?





――ガチャッ…




(……あ?)




そんな風に俺が靴に気を取られていると、不意に廊下の奥にある部屋のドアが開いた。



玄関の明かりは点いてるけど、廊下の方は消えていて。


そんな薄暗い廊下から、誰かがこっちに近付いてくるのが分かった。

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