同室者

第44話

まさやんの寮長室を後にした俺が、トコトコ歩いてやって来たのは。


今日から俺の部屋になる、2083号室…の前。



まだ中には入ってないよ。


心の準備がちょっと、な。






誠 side




太陽寮の二階へと足を踏み入れた俺が見たのは、果てしなく続く長ーい廊下。


そしてその両サイドにズラリと連なる、茶色い扉のオンパレードだった。



扉には部屋番が刻印されてて、それぞれのドアの横に二人分の名前が書かれたプレートが。


壁が淡いベージュテイストだから扉の色がよく映えて、高級感が漂っていた。



さすが超お金持ち校だな。


俺、人生の中で扉見て『高そう』って思ったの初めてだよ。





(同室の子ってどんな子かなぁ、友達になれるといいなぁ。)




自分の寮室までの道中。



俺の頭の大半を占めていたのは、今はまだ見ぬ同室者の事で。


初めての寮生活ってのも去る事ながら、ワクワクドキドキ期待が高まる。



ほら、俺ってばこんな性格だからさ。

普段つるんでるダチっつーと、女友達より男仲間の方が断然に多いんだよね。


なんか女の子って、自然と守る対象になっちゃうっつーか。

だから『友達』っていうのは少ねぇの。



なので同室者は久しぶりの、


俺の女友達候補。





「到ちゃーく。」




長い廊下のデットエンド。


やっと辿り着いた2083号室の前。



部屋の番号を確認して、扉の横にある名札プレートに目を向けると…







『    黒崎 誠




    龍ヶ崎 ノエル   』








ノエルちゃん、か。


ハーフかな。



可愛い名前だな。


いい子だといいなぁ。





すぅー、はぁー。


すぅー、はぁー。




「よしっ。」




気合い十分。


深呼吸をして心の準備を整えた俺は、さっきまさやんから貰ったカードキーを取り出した。



…てか改めて思ったけど、こんな昔の貴族が住んでそうな洋館にカードキーって。



しかも俺の花柄だし。


多分しのちゃんが自分でデザインしたか、下手すっと有名な画家とか雇って描かせた可能性あるよコレ。

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