第42話

この学園で一番厄介な『コイツ等』に目を付けられでもしたら、ただじゃ済まねぇ。


【鈴蘭】初の外部生ってだけでも騒がれるだろうに、その上『コイツ等』に関わっちゃ…。



クロの学園生活は、大荒れだ。





(……俺らしくねぇな、他人の心配なんて。)




ふと。


クロとコイツが鉢合わせしなかった事に、無意識に安堵する自分に気付き俺は苦笑を一つ零した。



今年も大勢の新入生が入学してきた。

あの外部生もその中の、一人に過ぎねぇ。


だがこの学園の生徒には珍しい、礼儀正しく素直なクロの人柄には好感が持てた。





(超難関の奨学生試験に通ったくらいだ。


天才でもガリ勉でも、自分の頭の良さを鼻に掛けたプライドの高ぇ奴なんじゃねぇかって想像してたんだが…。)




ごくごく普通の奴だった。

いや、普通っつーと語弊があるか。


面白いが気取った所がねぇ、サッパリした性格のいい奴だった。



俺の外見に物怖じしない所もそうだが、俺の『家』に対して媚びへつらう態度を取らない所も新鮮だった。


一般家庭の出っつー事は、『家』に対する捉え方そのものが違うんだろうな。



この檻の中で過ごすのも、残り一年。


面倒の種になりそうなもんに進んで関わろうなんざ、普段の俺なら思いもしねぇが…






『ありがとな、まさやん』





…ま、こういうのもたまには悪くはねぇか。


後輩の一人くれぇ、面倒見てやってもよ。





「残念だったな、お目当ての外部生はとっくに行っちまった後だ。


もう用はねぇだろ、早く帰れ。俺は忙しいんだ。」




シッシッと手を振り、桐原に帰るよう促す。


これ以上コイツの相手してたら身が保たねぇ、精神的にな。



…が、俺は桐原の次の発言に怪訝に眉を寄せる事になったのだった。

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