誤解が一つ

第40話

――パタン…




「さて、と。」




まさやんに別れを告げ寮長室を出た後、しのちゃんに連絡を入れた今し方。


入寮手続きをしたら久々に会う予定だったんだけど、しのちゃん理事長になったばっかで超忙しいもんな。



うん、仕方ないよ。


という事で…





「れっつらごー。」




階段を上がり二階にやって来た俺は、自分の部屋となる『太陽寮2083号室』へと足を向けたのでした。



俺の部屋は角部屋らしいから、廊下をずっと進んだ突き当たり。


ロビー同様赤い絨毯が敷かれたなっがい廊下を、とことことことこ歩いていく。



そんな道中思うのは、ついさっき会ったパツキン寮長さんの事で…






『【鈴蘭】初の外部生って事で周りの奴等があれこれ騒ぐかもしんねぇが、最初だけだから気にすんな。


いつでも遊びに来いクロ、茶ぐらい入れてやっからよ。』





ちょぅ兄貴だぜ。

惚れちまうよ。


俺【鈴蘭】来て初めて会ったのがまさやんで、ホント良かったや。



けど、ちょっと意外だったなぁ。

何がって、アレだよアレ。


だってさ、女子と男子で寮が分かれてんだろ?



だったら




『女子寮』の寮長って普通、




女がするもんなんじゃねぇの?

















半田 side





「ホント、つくづく外見を裏切る奴だなアイツは。」




第一印象、変な奴。


第二印象、モッサリガリ勉。


第三印象、体育会系。



次から次へと印象の変わる後輩の、何とも面白い名言の数々が頭に浮かび俺は思わず吹き出した。


寮長室で一人、クツクツと笑いを零す。

ホント、こんなに笑ったの久しぶりだぜ。



何とも面白い奴が入ってきたもんだと、今日何度目かになる感想を抱きつつ。


少しは机の上も片付けるかと、散らばった書類を纏め始めた。



…と、その時だった。





「思い出し笑いってムッツリがするんですよ、半田先輩。」




突然後ろから掛かった声に、俺は驚いて振り返った。


そして視界に捉えた人物に、更に目を見開く事になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る