Calling
第39話
――――……
『マコちゃんごめんね~!
ホントは今日中に会いたかったんだけど、明後日の入学式の準備がまだ終わってないのよ~!
だから二人きりで会えるのは、入学式の後になりそうなのっ…ぐす。』
電話の向こうから聞こえたすすり泣きに、苦笑が零れる。
携帯片手に横幅の広い階段を上りながら、俺は電話の向こうの相手に声を掛けた。
「泣かないでしのちゃん、俺はいつでも大丈夫だから。
入寮手続きも終わったし、今日は引っ越しの荷ほどきして過ごすよ。
明後日会えるの楽しみにしてる、お仕事頑張ってねしのちゃん。」
『や~ん!私もよ~!』
涙声から一転、テンション高く嬉しそうな声を上げる女の人。
電話越しでもハートがいっぱい飛んでくるのが分かって、それが擽ったくてクスクスと笑みが零れた。
かと思ったら次の瞬間には、何とも怒りに満ちた声色に変わって…
『っていうか三鷹の奴ったらこんなギリギリまでマコちゃん独り占めして、全然離さないんだもの!
ホント意地悪で嫌な奴よね!』
や、正確にはギリギリまで前川さんのスパルタ礼儀講座受けてたんだけどね。
他の生徒はもう入寮してんのに、遅れて俺だけ入学式二日前にやって来たのはそれが理由。
テーブルマナーやらダンスやら、骨の髄まで叩き込まれましたよ。はい。
「あ、そうだ。カードキーあんがとね、すげぇ可愛いヤツ。」
『あら気に入ってもらえて嬉しいわ、やっぱり女の子なら花柄よね!
マコちゃんの制服姿も楽しみだわ、赤いスカートですごく可愛いの!
それに…え?何よ、今電話中…』
俺が階段を上がりきったとこで、電話の向こうからしのちゃん以外の声が入ってきた。
何やら揉めてるらしく、苛立ったしのちゃんの声が聞こえる。
その場に立ち止まって、しばし待つ。
『もう分かったわよ!五月蝿いわねぇ!
あっマコちゃんごめんね~、もう切らなきゃいけないの。
明後日会えるの、ホント楽しみにしてるわ~!』
「俺もだよ。
じゃあまたね、しのちゃん。」
――ピッ…
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