第37話
二度目ですが言いましょう。
はあ、美味し。
まさやん緑茶入れんの超上手ぇよ。
ほんと、意外すぎ。
電車とバス移動の後の一時間半の登山で疲れ切っていた身体に、内側から染み渡るビバ緑茶。
んな風にソファーに腰を下ろして一休みする俺の傍らから、何やらガサゴソと家捜しする音が聞こえてきて…
「っかしいな、確かここに置いといたはずなんだが…。」
この部屋の主こと太陽寮寮長まさやんが、書類の山の中から宝探し中なんです。
違った、俺の入寮許可書を捜索中なんでです。
太陽寮の寮長室、まさやんのお城は十畳ほどの広さがあって。
俺の座るソファーとテーブルの他に、寮長として仕事をするデスクと書類が収められた本棚が。
反対側には簡易キッチンがあって、俺たちが入ってきたドアとは別に扉が二つある。
何の部屋か気になったけど。
まさやん今ちょっと忙しいみたいなんで。
イイコちゃんな俺は緑茶を啜って大人しく待機中。
「お、あったあった。
『奨学生黒崎 誠、太陽寮入寮許可書』。
おらクロ、チェックしてあるとこにサインしろ。」
「ん、了解。」
言われるがまま数ヶ所の同意欄に名前を書いていき、まさやんにリターン。
これで入寮手続き完了。
それを確認したまさやんは太陽寮寮長として、俺にスズラン館の説明をしてくれたのでした。
「さっきも言ったように『スズラン館』は、真ん中から太陽寮と月城寮の二つに分かれてる。
二階から上が寮になってて、ソコにあるニ岐の階段がそれぞれの寮に繋がってんだ。」
まさやん曰く、階段の他にも数ヶ所にエレベーターが設置されていて。
三階から上に住む生徒は、階段じゃなくそっちを利用する事が多いらしい。
確かに、二階ならまだいいけど。
五階とか、出掛ける度に階段で上り下りすんのはちょっと大変かもな。
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