第34話

外部生が口を開く度、俺は笑いが止まらなかった。

マジで酸欠で死ぬかと思った。


こんなとこ学園の奴等が見たら、かなり驚くだろうな。



漸(ヨウヤ)く笑いが治まって自己紹介、改めて外部生の格好に目を向けた。



身長は170ちょいってところか。


私服は普通のパーカーにジーンズ、靴は履き慣れた様子のスニーカー。



この時期の新入生は、【鈴蘭】に入学できたのがよっぽど嬉しいのか。


意味もなく一日中制服を着てる奴が多いだけに、普通の高校生らしいソイツのラフな格好には好感が持てた。



まぁそれよりも何よりも、


真っ先に目が行くのが…





――モサッ…




とした前髪で。



目元が隠れてどんな顔か分かんねぇな、コレじゃ。


所謂オタク系ってやつか、今時のオタクは随分体力があんだな。



まぁ奨学生試験をパスしたぐらいの奴だから、天才肌の変人か。


もしくは、電波なガリ勉野郎じゃねぇかっつー予想はしてたけどよ。



一方的に俺がそんな感想を抱いていれば、ソイツは地面に置いてたバッグを再び肩に掛けると真っ直ぐと俺に向き合い…





「俺は黒崎 誠です。


もう知ってるみたいッスけど、今年入学する一年坊主です。


これからよろしくお願いします、半田先輩。」




そう言ってビシッと姿勢を正し、ペコリと頭を下げたのだった。



体力馬鹿かと思ったらイタい子で。

イタい子かと思ったらとぼけた奴で。


かと思ったら前髪モッサリで、オタク系の外見してやがるのに…。




そんなナリして、


体育会系かよっ!





「あっはっはっはっはっ!」




ことごとく予想を裏切る外部生に、俺は今日何度目かの笑い声を上げたのだった。



ああ、この学園に入ってこんなに笑ったのは初めてだ。


今年はまた随分と、面白ぇ奴が入ってきたもんだぜ。

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