第33話

(は…?)




思わずポカンと。


声を掛けようとした口を開いた状態のまま、フリーズしてしまう。



え、コイツ何言ってんだ?


『開けごま』って確か、童話か何かに出てくる魔法の呪文の事だよな?



それをこんな大声で、しかもヤンキーみたいに巻き舌で叫ぶとか…。


え、もしかしてコイツ所謂(イワユル)イタい子って奴なのか?





――シーン…




勿論そんなんで【鈴蘭】の鉄門が開くはずもなく、辺りはまた元の静けさを取り戻した。



そ、そりゃそうだ。


開くわけねぇよ。



すげぇデケェ声で言うから、一瞬開くかと思って焦ったじゃねぇか。


そんな風に内心俺が安堵する一方で、ジッと門を見つめたまま動かねぇ外部生。



気を取り直した俺が今度こそ声を掛けようと、再び口を開いた…その時。




ソイツ、思いっっっきり首傾げやがった。


何で開かねぇの?って感じで。





(…開くと思ったのかよ!!)




そう思った瞬間、


もうダメだった。





「ブハッ!」



「あ?」




やべぇ、ツボった。



それから腹抱えて、俺は散々笑いまくった。


マジ、笑い死ぬかと思ったぜ。



笑い過ぎて咽せる俺を見かねて、背中を擦りだした外部生に。


変な奴だけど意外とイイ野郎じゃねぇかと、そう思った俺だったんだが…





「いや、どこの誰かは知らねぇが酸欠になるくれぇ面白いモンに出会えて良かったなアンタ。


人間んなに爆笑できるなんて事そうそうねぇぜ、おめでとさん。」




しれっとした口調で。



その面白いモンが自分だとは思ってねぇような、まるで自分には笑われる心当たりはないと言わんばかりに。


むしろ爆笑する俺をフォローするように、しみじみとそう言った外部生。



…お前、俺を殺す気か。





「ぶあっはっはっはっはっはっ!!!」




あー、腹痛ぇ。

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