side HANDA

第32話

バイクを飛ばして坂を上り、門のとこまで来てみりゃ案の定。


旅行用バックを肩に掛けた私服のヤツが、門前で立ち往生してるとこだった。



他に車もなけりゃ、途中でタクシーなんかともすれ違わなかった事から考えっと。


マジでこの坂を、自力で上り切っちまったらしい。



…どんな体力馬鹿だコイツ。


そんな事を思いながら俺は少し手前でエンジンを切ると、バイクを押しながらソイツの方へと近付いていった。



ソイツは両手でガシャガシャと門を揺すったりして、どうにかして【鈴蘭】の鉄門を開けようとしてる様だった。





(…開け方を知らねぇ辺り、コイツが例の外部生で間違えないみてぇだな。)




ソイツがどうすんのか少し興味があったので、ちょっくら放置してみる。


椅子代わりにバイクに跨がり直すも、外部生は門に夢中で一切俺に気付かない。



何やらブツブツと独り言を言っていたソイツは、徐(オモムロ)に荷物を地面に置くと。


呼吸を整え、何やら気合いを入れて集中し始めた。





(おいおい、何する気だ?


…まさか、殴って壊す気じゃねぇだろーな。)




鈴蘭学園名物『地獄の上り坂』を荷物持って徒歩で上るっつーあり得ねぇ選択をして、実際ここまで上り切ったぶっ飛んだ野郎だ。


あり得なくもねぇ。



門が壊される事はまずないが、下手に怪我でもされちゃ迷惑を被るのは俺だ。


そう思った俺は、ソイツを止めるべく声を掛けようと口を開いた。



が、それよりも一足早く。


次の瞬間――…








「開けえええいごまあああ!!!」





ごまぁ…、まぁ…、ぁ…





ソイツの叫び声が、


【鈴蘭】の山中に木霊した。

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