第2章前編 スズランの館
受験戦争…その後
第21話
誠 side
楽しい時間が過ぎるのは、あっという間。
二日後、三鷹さんが仕事で日本を発って俺に残されたのは寂しさと切なさ。
そして地獄の、スパルタ受験勉強の日々だった。
「学生の本分は勉強だ、【鈴蘭】に受かりゃ学費の心配もなくなる。
働くよりもまず勉強しやがれ。」
そう言って三鷹さんが俺の家庭教師として付けてくれたのは、三鷹さんの第一秘書の前川さんだった。
年齢は二十代後半、眼鏡を掛けた賢そうな外見。
三鷹さんが野性的で体格もいいから、隣に並ぶと優男っぽく見える。
三鷹さんがスパイスのきいた肉料理なら、前川さんは何て言うか…ミルクレープみたいな。
ピンと来るかな、この例え。
「さて、試験まで一ヶ月ちょっと。
ビシバシいきますから覚悟して下さいね、誠様。」
ニッコリと。
参考書片手に微笑む眼鏡男子の前川さんは、とても素敵で。
あまりに素敵過ぎて、ちょっと背中に冷や汗が伝(ツタ)っちゃいました…。
それから『BAR Noah』を初め、それまでしてたバイトを全部辞めて勉強漬けの毎日。
三鷹さんのマンションに泊まり込んで、前川さんにマンツーマンで勉強を見てもらった。
入試までの間、俺の鼓膜を震わせたのは。
自分と前川さんの声、そしてカリカリカリカリ響くシャーペンの音だけだった。
んな風に勉強に集中できる環境を提供してくれた三鷹さんや、スパルタ家庭教師前川さんのお陰もあって。
春、桜が舞う季節。
俺は無事、鈴蘭学園初の奨学生になる事ができたのでした。
「では今日から、礼儀作法と食事のマナー、その他【鈴蘭】で生活していく上での注意事項をリストアップしました。
入学までにこれ全てを完璧にマスターしましょうね、誠様。」
ニッコリ。
…無事に入学出来るかどうかは、まだ不明です。
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