第15話

―――……





――ちゃぷんっ…




「ふあー、極楽極楽。」




何とも年寄り臭いセリフを吐きながら、肩まで湯船に浸かる。


三鷹さんにキッチンを追い出された俺は、入浴剤で真っ白になった熱いお風呂を頂いておりまっす。



広い浴室に三人は余裕で入れるバスタブ。

ぷちマーライオンからはお湯が出てる。


身体洗って髪洗って、一日の汚れを落として。

さっぱりした俺は、はふんとため息一つ。



いつ見ても豪華な風呂。

俺ここに住めると思う。





「…前髪伸びたなー。」




足でちゃぷちゃぷとお湯を鳴らしながら。


人差し指で俺が摘んだのは、目に掛かるぐらいまで伸びた黒い前髪。



俺の顔や身長は父親似で、小柄で童顔だった母さんと唯一似てるのは。


サバサバした男前な性格と、一度も染めた事のないこの真っ黒な髪だけ。


俺の自慢。



母さん曰わく、それ以外は父親ソックリらしい。


友達からはよく、顔も性格も格好いいって言われるけど…





「あんま嬉しくないかなぁ…。」




――ちゃぷん…















「三鷹さん、お風呂上がったー。」




風呂を済ませた俺がリビングに行くと、ちょうど三鷹さんは出来上がった料理をテーブルに並べてるとこだった。


タオルで髪を拭きながら、その背中に声をかける。



俺の呼び掛けに三鷹さんは、こちらを振り向きながら口を開いた。



んだけど…





「おう、すぐ飯にすっぞ。


お前は冷蔵庫から好きな飲み物を取っ…て……」




俺の姿を目にした途端、三鷹さんの動きがピタッと止まった。



…ん?どうしたの?

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