第12話
キラキラ目を輝かす俺の頭をポンポンと撫でると、三鷹さんは話の本題を切り出したのでした。
「その鈴蘭学園だが、何でも今年から新たに奨学生制度が導入される事になったらしい。」
「…えっ!?」
奨学生制度という言葉に目の輝きが増すのと同時に、驚きの声を上げる俺。
つーのも、奨学生制度がある高校は一通り調べたはずだけど。
『鈴蘭学園』なんて学校名は、候補になかったはずで。
それを疑問に思うよりも先に、俺は続けられた内容に分かりやすいくらい食い付いたのだった。
「奨学生には学費の全額免除の他、高校三年間の制服・教材の無料配布。
学食のフリーパスや生活費、更には毎月小遣いが支給されるらしい。」
「!!」
マっマジですか!
そんなの今の俺にはオイシイ、オイシ過ぎる条件ですっ!
その奨学生制度の話、詳しくっ!
もっと詳しく三鷹さんっ!
…って。
普通なら物凄い勢いで、質問攻めにするとこなんだろうけど。
一瞬の沈黙後、俺は輝かせていた目を細めて小さく唇を尖らせたのでした。
「…三鷹さん、いくら何でもさすがに分かるよ。」
受験を頑張りたいって言った俺が抱える、学費の問題。
そんな中、降ってわいたように告げられた三鷹さんの母校での奨学生制度導入の話。
しかもそこの理事長に新しくしのちゃんが就任するってなったら、さすがに気付くって。
しのちゃんと一緒になって、俺の援助してくれようとしてんのがさ。
嬉しいよ、有り難いよ。
でもそれじゃ『BAR Noah』でした話と変わんねぇじゃん。
俺が心配してたのこーゆーとこ、三鷹さんのこーゆーとこ。
「あの学園には長い歴史がある、そんな中初めて導入される奨学生制度だ。
その第一号として相応しい被験者を探していた、お前の境遇はその条件をクリアしてる。」
ジトッとした俺の視線も何のその、素知らぬ顔でつらつら話を続ける隣の男の人。
何でも三鷹さん曰く、奨学生制度導入の話自体は随分前から出ていた事らしい。
一体どんな条件があんのかは知らないけど、俺の境遇ってのはつまり。
母さんが死んで他に身寄りがなくて、天涯孤独の身になった事を言ってるんだって分かった。
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