第9話

俺、今三鷹さんの顔見れないよ。

ちょう恐いもん。





「…木元、テメェ。」



「こら、年上には『さん』を付けなさい。それにホントの事でしょ?


今まで誠君を独りにしてたんだから、これくらい言われて当然です。」



「…チッ、」




きっ木元さん、強ぇ。



そんな木元さんの言う通り、三鷹さん家(チ)はビックリするくらい超お金持ち。


三鷹さんが生まれる前からお金持ちだったらしいけど。

三鷹さんが会社の社長になってから飛躍的に業績が上がって資産を増やしたんだとか何とか。



俺もあんまり詳しくは知らないんだけど。

母さんが言ってたっけなぁ確か。


ま、それはさて置き…





「三鷹さんの気持ちは嬉しいけど、俺が自力で何かをやり遂げんの好きって知ってるっしょ?


だから受験勉強も俺、ギリギリまで自分の力でやってみたいんだ。」




一人で頑張ってる孤独な自分が好きってわけじゃない。

ただ単純に自分の限界を極めるのが好きなんだ。


道場での習い事も好きだったし。

武道全般一通りできるぜ。



そりゃもちろん、三鷹さんの気持ちは嬉しいけど。


高校三年間通うのにどれだけ金がかかるか調べたから、ガキな俺にとっちゃ大金だってのも知ってるから。


いくら三鷹さんがお金持ちでも、学費を立て替えてもらうのはちと気が引ける。



それに三鷹さん、権力で何でもやっちゃうとこあるから。


入試に不合格でもコネ使って俺を高校に入れちゃいそうで、心配だから。



それじゃ意味ないからさ。


それじゃ俺が母さんの最後の願いを叶えた事にならないから、さ。





「……」




俺がそう言うと、三鷹さんは黙ってしまった。


三鷹さん、俺が一度言ったら聞かないって知ってるもんなぁ。



案の定三鷹さんはため息を一つ零(コボ)すと、苦笑しながら口を開き…





「…ホント、そーゆー所アイツにそっくりだよなお前。」



「ふふ、ほんとだねぇ。」




うん、ごめんね。


親子そろって頑固でさ。

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