第5話
ただいくら歳を誤魔化しても、未成年の俺にできるバイトは限られる。
しかも受験勉強をしながらとなると、時間はいくらあっても足りなくて。
そんな中、他のバイトよりも各段に時給がいい『BAR Noah』の仕事はすごく有り難かった。
「僕一人じゃ色々大変な事が多くてね、誠君が手伝ってくれると助かるなぁ。」
四十路オーバーとは思えないほんわか笑顔でそう言ってくれたのは、『BAR Noah』のマスター木元さん。
母さんの古くからの友人で俺の事情を知っていて、今まで一人で切り盛りしてたはずの自分の店で働かないかと勧めてくれた…俺の恩人。
ほんわかマスター木元さんの好意で、今では週のほとんど入れさせてもらって。
少しでも空いた時間は、受験勉強に当てる日々を送っていた。
そんなこんなで母さんの葬式から、早数ヶ月が経とうとしていた…。
――――……
「ところで誠君は、どこの高校を受験するつもりなんだい?」
開店前の店内。
仕上げの掃除をし終えた俺に、今夜かけるBGMの選曲をしていた木元さんが声をかけた。
モップやバケツを片付けながら、俺はここ最近の悩みを口にしたのでした。
「奨学制度がある高校狙ってんスけど、今からじゃ遅い所がほとんどで…ちょっと悩んでるとこッス。」
そう。
受験を決意したはいいものの、奨学生を募集してる高校は時期的にもう締め切ってるとこがほとんど。
一応近くの公立校を受けるつもりで願書も出したけど、出来る限り学費は浮かせたい。
それまであった貯金と保険金の一部、もう使っちゃったからね。
母さんの葬式とお墓買うのに、ね。
(ホント、どうすっかなぁ…。)
節約倹約、バイトすんのも苦じゃないけど。
人生何があっか分からねぇから、確実に学費確保できる手段があるなら利用したい。
ただ学校の先生にも相談してるけど、ちょっと難しそうなんだよなぁ。うーん。
そんな風に俺が頭を悩ませながら開店の準備を進めていた…と、その時だった。
――カランッ…
まだ『close』の札が掛かっていたはずの、バーの扉が開かれたのは…。
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