第88話

凛くんのお家に着いて、私をソファーに座らせてから一度離れた凛くんは…救急箱を手に持って現れた。





「化膿したらいけないから、念の為…消毒しておくね?ちょっと痛いかもしれないから、手…握ってていいよ」




片手をしっかり握ってくれる凛くん。いちいちキュンキュンさせてくるドクターリンリン。こんなイケメンに診てもらえるなら仮病をつかって病院に通う患者さんが増えそうだな。





「ん、終わったよ─…いい子だね、柚ちゃん」




余計なことを考えていた間に、消毒は終わってしまったらしい。ドクターリンリンの時間は一瞬過ぎて、オカワリを要求したいところではあるけど─…ここは我慢しよう。





「柚ちゃん、おいで─…」




両手を広げて隣に座った凛くん。迷うことなくその胸に飛び込んで…彼の膝の上に乗りギューッと抱き着く




片手で髪を撫でてくれる凛くん─…それが心地よくて、少し眠くなってくる





「大学で、怒鳴ったりしてごめん」




"大学"というワードが出てきて、眠気なんてものは一瞬で吹き飛んだ





「柚ちゃんの気持ちも考えずに、目の前で起こったことだけしか見えてなかった。ほんと、ごめんね?」





凛くんは何も悪くないのに…先に謝られると、何を言えばいいのか分からなくなるよ。

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