第80話

追いかけて来てくれないのは、凛くんが有沙の手当を優先したということだ。賢明な判断だと思う。沢山の人が見てた。どう見たって私が悪い…ケガをさせたのに謝らないなんて、どうかしてるよね。





『──…別れる…か、』





いずれ、凛くんは私の元を離れると思ってた。長く隠せることではないと思っていたし、風間に気付かれた時点で離れておけばよかったんだ






そしたら、こんな惨めな終わり方をせずに済んだかもしれないのにっ






『─…りん…くんっ、』






凛くんごめんねっ、ごめんなさい。

いっぱい嘘ついてごめんね、人を傷つけたのに

謝ることの出来ない最低な人間でごめん。







一人になりたくなくて、連絡もなしに友人の家を訪れて…インターホンを連打する





「……ちょっ、柚希?!どうしたのっ?!なに、痴漢にでもあった?!警察呼ぶっ?なんでそんな泣いてるのっ、、」





号泣しながら突然訪れた私を、本気で心配してくれる友人の真琴。その言葉全部が優しくて嬉しくて…余計に涙腺がゆるむ。





『凛くんっ、取られた…また、、わたしっ』



「待って…なに、まさかあのオタク彼氏に浮気されたの?!」





オタク彼氏…なんて、酷い言い方、、




「ほんとっ…柚希は男運ないんだからっ!だからやめとけって言ったじゃんっ!あんなよく分からないオタクっ…やめとけって、何回もっ…言ったじゃんっ!バカ柚希っ!!」





自分のことのように…泣きながら、私を叱りつける真琴。優しい彼女に甘えて、思い切り泣いた。凛くんが悪いわけじゃないんだよ…全部私が悪いんだ。





彼は本当は根暗なオタクなんかじゃなかった、ただそれだけの話し。本当に最低なことをしたのは他の誰でもない─…何もかも偽ってきたこの私自身なんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る