第74話

『……凛くんがカッコイイから、しんどい』



「………え?!カッコイイっ?!いやいや、柚ちゃんって本当に人とズレてるよね…俺をカッコイイなんて言うの、柚ちゃんくらいだよ?」





ギュッ…って、再び抱き締めてくれる凛くん。そっと胸に顔を押し当てる。私しか知らなかった凛くんの宝石ビジュアル…それを裏で風間によって勝手に解禁されてしまったのだ。






私が長い年月をかけて"非モテ"に育成してきた凛くんは─…今日、モテ男街道まっしぐらの入口に立たされてしまった。






そう遠くない未来、私に騙されていたことに気がつく日が来るだろう。そもそも彼はとても頭がいい。きっとすぐに…心の狭い私に縛られ続けていたことに気付き、息苦しくなってしまう





「……柚ちゃん?なんでっ、泣いてるの?」





凛くん、行かないで。もう…同じ思いはしたくない。だから凛くんと付き合った。凛くんなら浮気なんてしない…出来ないだろうって思ったから。





凛くんを初めてあのカラオケボックスで見た時─…とてもダサくて根暗そうなオタクだったから。凛くんみたいな人なら浮気なんてしないだろうなって、第一印象…最低なことを思った。





でもその後すぐに私にチョコレートをくれて励ましてくれた凛くん。その人柄が素敵すぎて…もっと知りたいって思った。




泣いてメイクが崩れても、可愛くあろうとしなくても…凛くんは離れたりしなかった。私という一人の人間と向き合って…初対面なのに大事にしてくれたことがとても、嬉しかった。

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