託卵されてた僕は過去に戻る

@yuta1123

第1話


 「あのさ…幸人君の好みの女の子ってどんな女の子?」



 そう僕に聞いてくる目の前の少女。真面目そうな三編みお下げの眼鏡。しかしながら着ている制服の上からでも判る、出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるスタイル。


 どうして今、目の前の少女が僕にこんな質問をしているのか理解できなくて、いや、僕が元妻と付き合い始める馴れ初めと同じ台詞を、元妻の若かりし頃の姿で言われてる状況に混乱している。



 「ねぇ。ちょっと聞いてる?」



 そう。あの時もこうやって急かされて、君みたいな真面目な女の子が好きって言ったんだ。

 それで、じゃあ付き合ってみようか。ってなって、そのまま出来ちゃった結婚。


 娘も無事に産まれ、高卒なりに一生懸命仕事をして家族と幸せに暮らしていたつもりだった。

 しかし、娘が中学生に上がる頃元妻が僕と娘を置いて家を出た。


 そりゃあ、色々動揺したさ。けど、思春期真っ盛りで僕に冷たくなった娘の事もあって、動揺してる暇なんて無かった。

 娘の反抗期も終わって、漸く元妻の居ない生活が落ち着いて来た頃に、1通の封筒が届いた。


 家を出てから3年。元妻からの封筒だった。

 流石に僕だけで見るのは忍びなくて、娘と一緒に見る事にしたんだ。



 内容はなんかもう色々衝撃だった。


 娘は僕との子供ではない。

 娘の本当の父親はやんごとなき人だから、仕方なく僕と結婚した。

 娘の本当の父親と別れたから、愛情も無くなり家を出た。

 今は遠い所で暮らして居る。

 好きな人が出来て、その人と結婚したいから、離婚届けを出して欲しい。


 との内容の手紙と共に、元妻の欄が記入された離婚届が封筒に入っていた。



 僕は何の為に高卒で働いていたのか。幸せな家族だと思っていたのは僕だけだったのか。いつから元妻は僕を裏切っていたのか。

 沢山の事が頭の中をグルグルしてた。



 「ごめんなさい。ごめんなさい。今迄の事を謝りますから私を捨てないで下さい。」



 僕はハッとした。僕なんかより娘の方が辛いだろって。

 母親に捨てられ、父親だと思っていた男も赤の他人。辛くない訳が無い。

 16年も父娘してきたんだ。今更血が繋がってないなんて関係ないよって。

 これからも君は僕の娘だよって伝えて、2人で抱き合いながら号泣した。


 家族の絆を結び直して、娘の為に頑張って働いたさ。

 でも、やっぱり血は争えないのか、娘が大学卒業間際に妊娠が発覚。

 反対したさ。だって相手は明らかに不真面目そうな青年だったんだから。

 人様の娘を孕ませた挙げ句、悪びれもせず、何とかなるっしょ!お義父さんも助けてくれるよね?だって。


 彼が帰った後に娘と大喧嘩したよ。売り言葉に買い言葉、どうせ血が繋がってないから頭ごなしに反対するんだ!って家を飛び出して行った娘。

 身重な身体で心配だったから直ぐに追いかけたさ。

 僕から逃げる為に赤信号を無視して道路に飛び出した娘に襲いかかるは、やけに急いでスピードを出すトラック。

 何とか追いついた僕はギリギリの所で娘と場所を入れかえる事に成功したんだ。



 それで、気がつけば目の前に僕と娘を捨てた元嫁の昔の姿。


 帰って来たんだと漸く理解できた。ならば僕は、あの時と違う台詞を君に送ろう。

 娘にはもう会えなくなるだろうけど、君と結婚する未来を無くそう。



 「僕は外見だとかはどうでも良いんだ。一途に僕の事を想ってくれる人が好きだよ。」





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