大聖堂

コクレオが目覚めてから数日が経過していた。仲間たち――神竜、蛇唾駆、テラ、そしてカイナンの行方を追う彼の旅は、無言の不安に包まれていた。かつて共に戦った者たちが、突然と姿を消すという異常事態は、何か大きな陰謀が動いている証拠だった。


「次はどこへ向かうべきか…」


コクレオは考え込んでいた。これまで訪れた神竜、蛇唾駆、テラの領域には、手がかりとなるものはほとんど残されていなかった。彼らが消える前に何か異変があったのかさえ、知るすべはない。


だが、コクレオは決して諦めるつもりはなかった。仲間を救い出し、この世界の平穏を取り戻すために、彼は再び歩みを進める決意を固めた。


次に向かうべき場所――それは、かつて魔王ギャザズレイスが封印されていた地、アビスレイヴンだ。コクレオの勘は、その地に何かがあると告げていた。かつての戦場に戻ることは、彼にとって辛い選択だったが、そこで何かが動いている可能性がある。


アビスレイヴンは、かつて世界を闇に包もうとした魔王ギャザズレイスが封印された場所だ。荒廃した大地には、今もその影響が残っており、常に重苦しい雰囲気が漂っている。コクレオはこの地でかつて激戦を繰り広げ、仲間たちと共に勝利を掴んだが、その後、二度と訪れることはないと考えていた。


「ギャザズレイスが復活したということなのか?」


封印が解かれた気配はなかったが、コクレオは不安を拭いきれなかった。もし魔王が再び目覚めているなら、世界は再び破滅の危機に晒される。コクレオはその可能性を否定しつつも、確かめるために足を踏み入れた。


荒廃した大地に響くコクレオの足音だけが、静寂を破っていた。辺りは不気味なほど静かで、魔力の気配は感じられない。しかし、その静けさが逆に不気味で、何かが隠されているような気がしてならなかった。


「ここには…何もないのか?」


コクレオが立ち止まり、周囲を見回したその時、不意に強烈な風が吹き荒れた。その風には、かつて感じたことのない悪意が混ざっている。まるで、世界そのものが怯えているかのような、不気味な力だ。


「この気配…ただの風ではないな」


突如として、彼の前に現れたのは一人の男だった。全身を黒いマントで包み、目には強大な力が宿っている。その男の姿を見た瞬間、コクレオは直感的に理解した――この男こそが、今回の事件に関わっている者だ、と。


「お前は誰だ?」


男はニヤリと笑い、ゆっくりとコクレオに歩み寄ってきた。その動きは、まるでコクレオの存在を楽しんでいるかのようだった。


「私はお前に用があるわけではない。ただ、今はお前の力を試したいと思ってな」


男は冷静にそう告げると、手を一振りした。すると、周囲の大地が突如として激しく揺れ始めた。大地の裂け目からは黒い炎が立ち上り、その中から数体の怪物が現れた。


「なんだ、これは…!」


コクレオは驚愕した。これほどの数の怪物を、一瞬で呼び出すとは、ただ者ではない。この男の正体は何者なのか。コクレオはすぐに戦闘態勢に入った。


「お前の仲間たちが消えた理由が知りたければ、私を倒してみせろ」


男の言葉に、コクレオの中で怒りが沸き上がった。仲間たちの行方が、この男に関わっていることは明らかだ。彼を倒せば、全ての真相がわかるかもしれない。


「お前が何者であろうと、俺の邪魔をするなら許さない」


コクレオは雄叫びを上げ、黒い炎をまとった怪物たちに向かって突進した。彼の体から溢れ出る力が、まるで嵐のように周囲を巻き込み、怪物たちに襲いかかる。強烈な一撃で、次々と怪物たちを倒していく。


「ふん、さすがは獅子の王…だが、それだけで終わると思うな」


男は冷静にそう言い放ち、再び手を振ると、今度はさらに巨大な怪物が姿を現した。その怪物はまるで魔王ギャザズレイスの化身のように、圧倒的な力を誇っていた。


「これで終わりだ!」


コクレオは叫び、全力を込めて最後の一撃を放った。巨大な怪物はその一撃を受


「これで終わりだ…さあ、全てを話せ」


男は倒れた怪物の残骸を一瞥し、静かに笑った。


「なるほど、さすがだ。だが、まだ終わりではない」


男はそう言うと、一瞬で姿を消した。コクレオはその場に立ち尽くし、拳を握りしめた。何が起きたのか、まだ全てを理解していなかったが、仲間たちが消えた理由がこの男に関係していることは間違いない。


「必ず見つけ出す…神竜、蛇唾駆、テラ、カイナン、待っていろ」


コクレオは決意を新たにし、再び旅を続けることを誓った。次なる手がかりを求めて、彼は再び歩みを進める。仲間たちの行方を追い、そしてこの世界に迫る新たな脅威を打ち倒すために。


次に向かうべき場所――それは、カイナンの最も古い記録が残る「大聖堂」だ。







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