1.1枚目 いやいや嬉しいけど…

よし。とりあえず初当たりゲット。あとは投資分約三百枚を回収できるかどうか。

この店は等価やから設定狙いせずにハイエナするには丁度いいのでお気に入りである。

ふと隣の台を見てみる。

おっ、隣の彼女も当たってるみたいや。天井かな。まぁ彼氏帰るまでは彼氏の金で打ってたみたいやし、実質彼女自身の投資は数千円。ある意味ラッキーやなぁ。


ん?あれ?んん?

なれない彼女の打ち方が気になる。手ではスロットを打ちながら、目線だけ彼女の方にやる。

あー…。

色目押しが出来ていない。この台はボーナス中に色目押しが必要な高純増機である。色目押し自体、慣れていれば難しいことではない。だが、初めてとなれば話は別である。それに目押しが必要なことを理解しているのかも怪しい。押し順は守っているようだが、メダル払い出しの音がほとんど聞こえない。

めちゃくちゃ損してるぞ。もったいないなぁ。

どうする。話かけるか?助けるか?。いやでもピエロの7を揃えるのとわけが違う。アレは一回で済むが、これは一回どころじゃない。いや話かけたら仲良くなってワンチャン??

…でもあんな彼氏居たし絶対地雷だし、ワンチャン無いか?どうするか…


「あのー、えっとその、、目押し大丈夫ですか?」

声を掛けてみる。ちなみに心臓バクバクである。

「え?、、あっコレ全然狙えなくて…」

「えっとよかったら、そのえっと、おっ教えますよ」

「え?…本当ですか!?じゃあお願いしてもいいですか?」

「あっはい。任せてください」

やっべ。"任せてください"は返答としてミスかもしれない。うまく教えられる自信ないのに。

「えっと、まず7見えてますか?」

「全然見えなくてぇ、赤いのが通ってるのは少し見える気もするんですけど」

「えっと7を見るコツがあってですね、7って他の図柄より大きいじゃないですか。だから7の右上の部分だけを見るようにするんです」

なんとかそれっぽい説明をする。

この説明で理解できているだろうか?頼むうまく伝わってくれ。

「へーなるほど…。」

…まだ見えてなさそうだな。。

「見えにくいですか?なら7以外の図柄が回っている縦の列がぴったり隠れるように手で隠してみてください。この時7だけは、はみ出すように隠すんです。そうすると白のリールに7だけが回ってくるのが見えるハズです。あとはタイミングを覚えて止めるだけって感じです」

頼むこの説明でどうか目押しできるようになってくれ。

「…出来ました!」

ふぅっと胸を撫で下ろす。

「あっ良かったです」

「ありがとうございます!助かりました」

「いえいえ…お気になさらず…」

色目押しを完全にできるようなったわけではないが、ある程度はできるようになったみたいだ。


…会話が終わってしまった。

くそ、ここで会話を続けられるコミュ力さえあれば。ワンチャンあるかも知れなかったのに…。いや彼氏持ちだから無理か。


今日は調子がすこぶるいいらしい。なんとこの機種では初めての上位atまで引っ張ってこれたのだ。現時点で持っていたメダルも合わせて約二千枚のプラスだ。しかもまだまだやれる気がする。正直、ニヤニヤが止まらない。今日は帰ったら、ピザでも頼んで一人でパーティしちゃおっかなー。いや、それかあれだ。風俗デビューしちゃおっかなぁ。正直、勇気が無くてなかなか一歩を踏み出せていなかったが、今日ならいける気がする。(二つの意味でw)ニヤニヤが止まらない。

「あのー」

「えっ!?あぁっうぁ。なっなんですか?」

妄想に浸りすぎてぼーっとしていたせいで、びっくりした。ニヤニヤしているのも見られたかもしれない。

「さっきはありがとうございました」

彼女は俺の斜め後ろに立ちながら軽く頭を下げる。

あーさっきの彼女か。自分の世界に入り込んでてすっかり忘れてた。

「えっ。あーいえいえ…」

言葉に詰まる。

「ホントに助かりました。これ良かったらなんですけど」

よく見えないが、彼女は何か紙のようなものを差し出す。

これあれじゃね。連絡先書いてある紙じゃね。キタコレ。

受け取ってみる。

「えっ。これは…」

紙は三つ折りにされた五千円札だ。マジか。

「その、目押しできなかったら、全然増えてなかったから。お礼として少ないかもですけど。今お財布に五千円しか入ってなくて。」

「いやいや、申し訳ないですよ…」

正直、連絡先が良かったが、五千円も悪くない。普通に欲しい。が、こんなことでお金貰うのはなんか違う気がする。というか普通お金渡す?

「本当に大丈夫ですって。俺、今日はたくさん勝ってますし」

言いながら、俺は五千円札を差し返す。

「受け取って…ください。私も多分五千円以上は勝ってると思うので…あなたのおかげです」

うお。なんかドキッとした。その言い方ちょっと嬉しいかも。まぁ確かにさっきまで打ってたのなら千枚以上は出ているはず。

「いやでも…」

「ありがとうございました」

そう言うと、彼女は早足で行ってしまった。

いやマジか。行っちゃった。五千円嬉しいけど…。なんか罪悪感すごいな。まじか…

「まさか!?」

コレはお札に連絡先が書いてあるパターン?

五千円札の表裏両方観察する。

うん。書いてない。書いてあるわけがない。

まぁラッキーってことだよな。

俺は五千円札を財布にしまい、意識をスロットに戻す。

「よし、マジで今日はコンプリートするぞ!」


結局、俺はこの日五千枚ほど回収して帰路についた。風俗デビューも考えたが、なんかそんな気分ではなくなっていた。回収したメダル五千枚よりも貰った五千円札が頭から離れなかったから…

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群れるようなエイは一パチでも打っていて おつおつみ @otsumi023

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