7.事故①
現場に譲と神崎が到着すると、それを見つけた研究員が声をかけてきた。
「所長」
「状況は?」
「白石副主任がデータについては対応してくれてます。物理の方は、感電の危険があるため電源を抜いた状態で、手を触れていません」
「ってことは、やられたのはケーブルじゃなくサーバー本体か」
「はい。3台使用不能になりました」
「セクションは?」
簡潔な譲の問に研究員はウィンドウを開き、細かな説明を始める。
それを横目で見て、神崎は現場を確認しようとサーバー室へ入った。
「おや、早い到着で」
嫌味か感嘆か分からない様子でおどけて言う白石をじろりと一瞥し、神崎もウィンドウを開き被害状況を調べ始める。
「どうせ今日も一緒だったんだろ?」
白石がウィンドウを叩きながら神崎へ言う。
「あの顔と見た目だ。女の代わりにはもってこいか? さぞかし取り入るのは楽だろうな」
譲と神崎の関係は、基地に居るものならば知らない者は居ない。
だが、わざわざ文句を付けてくるのは白石くらいなものだ。それは、肩書きの問題もあるが、神崎の前職に寄るところも大きい。
神崎は日本再興機関立ち上げ前は、陸軍所属の軍人だった。正確には、立ち上げ後も陸軍に所属し、その年齢と実力から活躍していた。軍事部門を手にするのではと噂されていたが、とある事故により一線を退き、現在に至る。
「新人も入ったと言うのに、変わらないな。悪影響は及ぼさないでくれよ」
白石の言葉を聞き流し、淡々と自分の仕事をする神崎に、白石は1つ舌打ちをすると、ウィンドウを閉じた。
「どうせ、この騒ぎもお前の仕業だろう? そんなに軍部に戻りたいのか。この駄犬が」
しかし、神崎は無言を貫く。白石は神崎を睨みつけると、出口へと向かう。
そこには報告を受けている譲が居た。
「今日も賑やかな夜になったね」
「それも、後数日の辛抱だ」
白石の言葉に、譲は無表情のまま返す。
「で、原因は?」
「ウイルスが数種類。本体が無事なサーバーのうち、半数がロックされて、2台は熱暴走でイカれてる」
「解った。一旦サーバー室3は閉鎖する」
「閉鎖? 犯人は捜さないのかい?」
「今は無駄なことをしている時間が惜しい」
「しかし、ここは処理棟と農村ブロックの制御を……」
「直接制御に切り替える。神崎! 聞こえているな? 処理棟は任せる」
「了解しました」
「なっ……」
白石が口を開くより前に、譲が冷たく睨み付け、黙らせる。
「農村ブロックの制御は俺がやる。アンタはもう寝てくれて構わない」
「我々も手伝います」
数名居た、当直の研究員が名乗り出る。
「いや、いい。すぐ終わる。元の作業に戻ってくれ」
「分かりました」
「俺は部屋で作業する。入り口の封鎖だけ頼む」
「はい」
こうして、各々がそれぞれ自分の持ち場に移動していった。
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