第14話 再会
僕は今年で31になる美術教授だ。
今日は2年前まで勤めていた高校で担当した第45期卒業生の集まりに招かれている。
きっと麗華は来ていない。
ビュッフェが並ぶそのレストランに入ると
茶髪の派手な女子が駆け寄ってきた。
「きゃーー福地せんせ!!!
お久しぶりでーーす! 」
誰だっけ。
「ののずっと会いたかったんですよぉー!
どう?大人っぽくなった??」
ああ、あの成金商社の娘か。
相変わらずうるさくて耳障りだ。
「久しぶりだね。藤田さん。五十嵐さんも。」
「え、うちのことも覚えてんの?
さすが理事長の息子やな。」
なんと言っても五十嵐文香の父親は五十嵐元知事で学園経営のために重要な生徒だった。
「ねぇせんせー?のの、大学でもバレーやるって約束したけど今はテニサー入ってんの。
もーまじごめんね福地せんせー」
そう言って藤田は上目遣いをしてきた。
いや、お前のサークルとか興味ねぇよ。
「犀川...は来てないのか。」
「あれ?先生麗華と親しかったっけ?」
「いや、お前たちいつも3人でいたからさ。」
「ふぅーーん。」
藤田は少し拗ねた。
僕は昔からこういうタイプの女子生徒が苦手だった。うるさくて、知性がなくて、若さしか取り柄がない。
その点麗華は違った。
容姿や佇まいは美しく大人びていて、賢い。何より母親のいない家庭環境に育ち、その容姿端麗とは裏腹に貧しさにもがく必死な眼差しがなんとも魅力的だった。
「私たちもいま麗華がどうしてるか知りませーーん。生きているかどうかも。」
「のの、もうこの話は...」
「わかってる。でも改めて考えるとちょっとムカつくんだよね。だってあの子いつでも私とみんなは違うみたいな感じだったじゃん。」
「...」
僕も麗華が今どうしているのかわからない。
あの日、横断歩道の向こうで麗華を見つけた時にしっかりと捕まえておけば良かったと
何度後悔したことか。
あの時奪われた金はもうどうでもいいが、
あとで色々調べたところ、おそらく麗華は父親の治療費にあの金をあてた。
僕は麗華を自分の手の中に収めたくて、
何度も汚い手を使った。
言い寄ってきたのは彼女だったが、彼女に恋愛感情なんて微塵もなかっただろう。
僕は彼女の抱えている事情を知りながら、
本当はか弱くまだ幼い彼女と関係を持った。
彼女が入学してきたとき、その15歳とは思えない妖艶さと絶妙なあどけなさに目が奪われた。
その可愛らしい笑顔や、芸術品のような美しい横顔をこっそり目に焼き付け、何枚も何枚も彼女の絵を描いた。
きっと彼女は賢いから僕が利用しやすい人間だと見抜いたのだろう。
僕は今でも彼女が恋しい。
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