第3話 足かせ

大学受験の前日。


「お姉ちゃーーん」

ふと目を覚ますと弟の真斗が私の顔を覗いていた。私は昨日遅くまで勉強をし、そのまま机で寝てしまっていた。


「真斗、あっ、もうこんな時間!

今すぐお弁当作るから、優斗起こしてきて!」


「もう起きてるよ。弁当なら父さんが作ってった。」


「え?お父さんが?」


「うん。あと今日は夜遅くなるかもしれないから明日のためにも暖かくして寝ろよって言ってた。」


「わかった...ありがと。」






正直このまま大学に行くべきなのか私は迷っていた。奨学金で行けるとしても、それはいずれ返済しないといけないものでこの貧しい暮らしが厳しくなるだけだろう。

父は迷わず行きなさいと行ってくれるが、弟たちのことを思うと不安が残る。







ー学校ー


授業が終わり、私は先生に頼まれた書類を教員室へ届けた。


「犀川さん、明日は頑張ってね。

あなたの成績なら絶対大丈夫よ。」


「ありがとうございます。」


「それにしても、ご実家の力だって借りれただろうに自力で難関大を目指すなんて、立派だわ。ほら、うちの学校は裕福な生徒が多いからほとんど裏口か推薦でしょ?」


そう言って先生は決まりの悪い笑顔を見せた。


校舎を出ると、例の美術教師が現れ私の右腕を強引に引っ張り駐車場へと連れて行った。


彼は自分の車に私を乗せ、自分の家へ向かった。



「君が行きたいって言ってた芸大へ推薦してやったよな?」


「気が変わりました。」


「はぁ、、僕がいつまでも甘い顔をしてると思うなよ?君みたいな貧しい娘が1人で生きていけるとでも?」


「父がいます。弟も。1人じゃありません。」


「はっ。知ってるよ。ただの君の足かせじゃないか。」


「違います!!」


「違わないね、愚かな父親と幼い弟たち、彼らを捨て自分の容姿と才能を生かして生きられたら、、そう思ってるだろ?」


そう言って教師は私の前に札束の入った分厚い封筒を出した。


教師は怒りに震え涙をこらえる私をベッドに押し倒し、太ももに手を伸ばした。

栄養の行き届いていない筋力の乏しい体は彼に抵抗するには弱すぎた。

必死に抵抗した。



私は近くにあったキーボードで教師の頭を横から殴った。



衝撃に苦しむ教師から封筒を奪い私は家を飛び出た。








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