第88話

「今日から、そこに寝て。食事はオレが運ぶから、なるべく部屋から出ないで。」


リーはわたしの小さな喜びなんて完全に無視で淡々とそう言うと、一つのベッドを指差した。


そのベッドは誰かが使っていたものみたいで、毛布がクシャクシャのまま置かれているし、シーツにも皺が寄っている。





「ここは──誰のベッド?」


「朝まではシュウが使ってた。」


「シュウ?」


「さっきいた、日本人の男だよ。」





ああ、と納得した。


ヒヤマの名前は、シュウと言うんだ。


「ヒヤマさんは…どこに寝るの?」


「あいつは、ヤンのベッドに移るから。」






ドキリとした。


ヤンと聞いて、あの髭面の男の顔が浮かんだ。


ヒヤマは、リーがヤンを殺したと言っていた──。






「ヤンは…もういないから?」


恐る恐る聞くと、リーはあっさりと答えた。


「ああ。」


「──あなたが…殺したの?」


「そうだよ。」

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