第86話

だけどそこで、ヒヤマはまたクスリと笑った。


「殺気が丸出しだな。殺人鬼の癖に。」


「…?」


彼の言葉の意味がわからなくて顔をしかめると、ヒヤマはわたしからスッと体を離し後ろを振り返った。






いつからいたのか、そこにはあの美しい男──リーがいた。


じっと…それこそ眼力で殺せるんじゃないかっていうくらい、ヒヤマを睨んでいる。


リーが中国語で何かを言うと、ヒヤマは嫌な笑みを浮かべたままわたしから一歩一歩遠ざかり、格子戸の前まで行くと足を止めた。






リーはそれを確認すると、ヒヤマからわたしに視線を移した。


ヒヤマが中国語でリーに何かを言ったけど、リーは何も答えない。


ただわたしの腕を掴むと、引っ張るようにしてこの牢屋のある小部屋から出て行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る