第85話

「…何?」


ヒヤマの視線が気持ち悪くて、不機嫌な顔でそう尋ねる。


するとヒヤマは、広角をうっすら上げる彼独特の含んだような笑みを浮かべ、「…へえ。」と呟いた。






そしてぐいっとわたしの方に迫ってくるものだから、わたしは後ずさりしながら追い込まれるように壁に背を付いた。


ヒヤマは妖艶な笑みを浮かべたまま、目の前に顔を近付けると、持ち上げるようにわたしの顎に手を掛けた。


「こうして見ると、わりといい女だな。出るとこ出てるし。」


ヒヤマの手が、なぞるようにわたしの胸の膨らみを撫でた。






「…触らないでっ!」


その手を払いのけようとしたけど、強く捕まれ身動きが取れなくなる。


「なあ、リーに飽きたら俺とも遊んでくれよ。最近ご無沙汰だから溜まってんだ。あいつより俺の方が、ずっと上手いぜ。」


唇と唇が触れそうな距離で、ヒヤマがそう囁く。






「……!」


侮辱された悔しさから、真っ赤になって何かを言い返そうとしたけど、それは言葉にならなかった。


───悔しかった。


わたしをオンナという道具としてしか見ていない彼に、嫌悪感を抱いた。

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